一方、企業の活性化には、強靭な経営基盤も不可欠だ。玉塚氏は「数字ベースで目標を立て、それを確実に遂行していくことが大切」と話す。さらに、有効なエッセンスとして「商品・ブランドに対する強烈なパッション」を掲げる。これまで、米国のハンバーガーチェーンのバーガーキングをはじめ、ドーナツチェーンのクリスピー・クリーム・ドーナツ、アイスクリームチェーンのコールド・ストーン・クリーマリーといった、人気店舗の日本進出の仕掛け人でもある玉塚氏は「そのブランドも従業員がそのブランドや商品を信じて本当に"おいしい"と確信して売っている」と話す。また、企業経営にとって重要なのは、"いかに自立型組織が構築できるか"にあるという。「自ら考えて行動する自立型の社員に対して、依存型の社員は他責傾向にある。そのどちらが経営にとって戦力になるか結果は明白だ」(玉塚)氏。

リヴァンプ 代表取締役 玉塚元一氏

経営のプロとして、数多くの再生事業を手掛けてきた玉塚氏。資金制約が多い再生事業においても、人材投資は最も効果が高いものだと確信しているという。「企業としての土台を最初に正しておかないと、後からハード面をいくら強化しても意味がない」(玉塚氏)。

「現在、消費者市場は確実に縮小傾向にある。しかし、その一方でプレイヤーの数は減っておらず、むしろ増加している。さらに顧客のニーズは複雑化、多様化し、情報にたどり着くソースも非常に複雑化してきている」と分析する玉塚氏。そんな中、市場で生き残るために企業に求められる資質はやはり"ダイバーシティ"だ。玉塚氏は「みなが多様な意見を持ち、それを前面に引き出していかなければこれからの企業は厳しいだろう」と警鐘を鳴らす。

玉塚氏が経営の建て直しに成功したユニクロは、それまでNIKEなどのナショナルブランドの低価格販売をウリにしていた経営戦略から、高品質のベーシックカジュアルのプライベートブランドを作り出し、低価格で販売する戦略への大転換を図り、いまや世界市場を狙えるブランドにまで成長した。玉塚氏によると、この大変革もダイバーシティを抜きにしては語れないという。玉塚氏は「経営者の仕事はタコ壺のタコを引っ張り出すこと」と語った、ユニクロの柳井会長の言葉を紹介し、「ダイバーシティーとは、多様なものを入れながら、常に健全な議論をして核融合を起こすことだ」と、講演を結んだ。