東京ビッグサイトで8日、日本鉄道模型の会主催による「国際鉄道模型コンベンション」(8~10日)が開催された。今年で9回目となる同イベントは、メーカー、販売店、クラブ、個人の最新アイテムが一堂に会する日本最大級の"鉄道模型フェス"として知られる。秋以降に発売される商品の試作品を先行公開するメーカーもあれば、まだ商品化されていない人気鉄道車両を、いち早く手作りでモデル化した個人出展もあり、この日も子供から大人まで幅広い年齢層の来場者で終日ごった返した。その模様と、現場で注目されていたアイテムたちを紹介しよう。

トミーテックでは限定品「さよなら『銀河』10両セット」などに注目

レイアウト志向のユーザーから注目を集めたトミーテック「ファイントラック」デモ

鉄道模型メーカーには、トミーテック、カトー、マイクロエースなどがあるが、本イベントでも前述の3社は最も大きなブースを構え、来場者を迎えていた。なかでもトミーテックは、秋以降に発売予定の新商品ラインナップに注目が集まっていた。ポイントは懐古モノと最新モノ。その両方のニーズを満足させる新アイテムが「さよなら『銀河』10両セット」「JR E233 0系通勤電車」「JR 321系通勤電車」(Nゲージ)だ。「銀河」は、今春多くのファンに惜しまれながら消滅した、東京~大阪間を運行した寝台急行で、同列車の運転最終日のスタイルをモデル化したもの。続く2つの通勤電車は、JR東日本とJR西日本の最新車両で、東京圏の中央線、関西圏の京都・神戸線を走るスターたちだ。同社は車両のほか、レール関連商品のPRにも力を入れている。従来のレールよりも緻密で扱いやすい「ファイントラックシリーズ」のデモンストレーションコーナーでは、真剣に見入る大人たちで混み合っていた。

大型レイアウトから卓上レイアウトまでさまざまなサイズのレイアウトを提案。現代の鉄道風景、懐かしいローカル線の風景など、時代性も多彩だ

JR中央線快速電車・E233系もこの秋Nゲージで登場。別れが惜しまれる201系電車もいっしょに入手して、通勤電車の時代の移り変わりを自宅で味わいたいもの

寝台急行「銀河」の最終日の光景を自宅で再現。3月14日、「銀河」ラストランとなった東京発大阪行き同列車と同じ編成を精密にモデル化したもの

カトーはカスタム加工サービス、マイクロエースはイベント限定品

一方、カトーは、デモンストレーターを2人立て、カスタム加工サービスを熱心に紹介していた。こちらはかなりマニアックなニーズを捉える商品で、従来の商品をさらに本格的なディティールに仕上げてくれるサービスだ。デモで人だかりができていたのは、EF63型電気機関車の「DCCデコーダ取付加工」。碓氷峠で活躍したこの機関車EF63は、入換え作業時などにテールランプの片方だけが点灯する場合がある。普通、Nゲージは走る方向に向けてヘッドライトが、後方は赤いテールランプが点る。そこを実写と同様に、Nゲージでもテールランプの点灯バリエーションを忠実に再現しようというのがねらいで、実写にとことん近づけたいというユーザーにはうれしいサービスだ。

長野新幹線開業前の、信越本線・碓氷峠の光景を、精密に再現したい人の欲求に応える「EF63 DCCデコーダ取付加工」デモにも多くのファンが見入っていた。重連、3重連と連結し、"ロクサン全盛期時代"のシーンを再現したい

また、マイクロエースはHOの新作PRに大きくスペースをさいていた。同社はトミーテック、カトーに続きHOの製造・販売を開始。今秋発売予定のHOゲージ・国鉄型キハ52の新作モデルを公開していた。同モデルは、大糸線、首都圏、標準の3カラー4モデルを発売する予定だという。さらに、同社は本イベント会場限定商品「167系アコモ改良車タイプ『しんせんやまなし』色4両セット」を発売。当日ぶんは即完売した。来場者の中には、こうしたイベント限定品を狙って開館時間に飛び込む人たちもいるという。

マイクロエースのNゲージ新作コーナーでは、秋冬に発売される予定の試作品が、塗装前の状態で公開されていた。同社らしい、かなりマニアックなラインナップも

イベント会場限定商品「167系『しんせんやまなし』」は即完売。3日間連続で販売するという

こちらはグリーンマックスの新作「近鉄5200系電車」。近畿日本鉄道の急行型車両で、クロスシート3ドア車として実車も人気がある

個人や学校のクラブなどの出展ブースは手作りモデルに熱い視線が

前述のトミーテックでNゲージ化されたE233系中央線電車は、メーカーが商品化する前に手作りでモデル化しようという敏腕モデラーたちの注目の的となっていたようだ。個人や学校のクラブなどの出展ブースでは、見事なオリジナル作品がそれぞれ展示されていた。なかでも驚かされたのは麻布学園・鉄道研究部のブース。手作りで仕上げたHOサイズのE233系10両編成が広いレイアウトを快走していた。同車を製作した同学園高校1年生の男子は「E233系が中央線にデビューしたころに『作ろう』と思いついた。完成するまでに10カ月程度かかったが面白かった。メーカーが商品化する前に作ることが醍醐味ですね」と満足げに話していた。また、成城学校鉄道研究部ブースでは、巨大レイアウトと多数の車両を用意し、さらにオリジナルの赤いTシャツでそろえた部員たちが来場者を迎え入れるなど、学校の文化祭に近い雰囲気を感じさせる。また、小中高の学校ばかりでなく、大学の参加も。新交通システム・LRT(路面電車など)を研究する多摩美術大学勝間研究室のブースでは、オリジナルのLRTモデルを製作・展示。LRTとともに取組む同室の研究資料の一部が公開されていた。

これが自作のE233系。HOサイズのE233系はまだ商品化されていない。10両編成を見事に再現した麻布学園の高校1年生クンに脱帽

多摩美術大学勝間研究室LRT研究グループは、未来のLRTシーンをシンプルに再現。本物と同様、架線から電流を引いて走行する

紙で作るペーパーモデルのHOゲージが華やか

オリジナル作品のなかでも、熟練さとある程度の技術が要るペーパーモデルを目の当たりにした来場者は、ただただ唸るばかり。ペーパーモデルとは、その名のとおり紙で製作する鉄道模型の世界で、ペーパーモデルの有志団体「紙成り模型チームおやびん」のペーパーモデル体験コーナーも人気だった。今までに製作された伊豆急行車両がズラリと並べられたテーブルには、「コレ本当に紙で作ったんですか?」とスタッフに思わず聞いてしまう来場者も。鉄道模型誌「RMモデルズ」などを出版するネコ・パブリッシングのブースにも、以前に掲載された作品が展示されていて、紙で作られた精巧なE233系中央線HOゲージが並べられていた。メーカー顔負けの出来栄えに驚かされるばかりだ。ちなみにネコ・パブリッシングのブースでは、同社が鉄道模型メーカーから選りすぐったオリジナル・キット「大糸線旧型国電5両セット」がよく売れていた。

紙成り模型チームおやびんのブースには、ペーパーモデルがズラリと並んでいた。「コレ本当に紙で作ったの?」と思わず聞きたくなるほどの精巧な出来栄えに拍手

ネコ・パブリッシングのオリジナル・キット「大糸線旧型国電5両セット」はよく売れていた。ちなみに完成見本はこんな感じ。なんともノスタルジー

こちらは紙でつくったE233系中央線電車のHOモデル。RMモデルズ(ネコ・パブリッシング)に掲載された珠玉の一品

そしてこちらはプラ板からつくったE233系東海道本線電車のHOモデル