--グリッドやOpenTypeへの対応など、日本語組版機能が一新されたことは、バージョン8の大きな特長になっていますよね

逆に言うと、これまでの機能が貧弱だったんです。OpenType機能もありませんでしたし、グリッドも使えませんでした。QuarkXPress 8日本語版では、OpenTypeの全機能にアクセスできますし、グリッドも制限せず、ユーザーのやりたいように設定できます。OpenTypeのプロポーショナルメトリクスを全体に掛けるだけで最適な詰めが行えますし、そこから約物や記号類、半角文字に対して二分アキ・四分アキの設定をすることも可能です。

ユーザーの不満を解決した設定の一例を挙げると、段落の最初の文字を一字落としにする場合、QuarkXPress 8日本語版では段落設定を使用することが挙げられます。これは、文字設定にすると後でイレギュラーな処理が発生したときに面倒な作業が入るからです。なるべくスムーズでシンプルな設定項目になるよう考慮しました。

日本語組版設定を開発するにあたっては、実際にユーザーと膝をつき合わせて何度もヒアリングを繰り返しています。中でも今回の新機能である「ぶら下がり」の設定はユーザーに引っ張っていただき、かなりカスタマイズ制の高いものに仕上がりました。今思えば「ちょっとやり過ぎたかな(笑)」という部分もありますが、仕事で使える日本語組版機能はほぼ実現しています。ただ、高度な設定ができるようになった分だけ難しいと思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで、できるだけ早く、組版の手引き書などを制作したいと考えています。

また、日本語組版機能以外では カラーマネージメント環境も新しくなっています。とはいえ、QuarkXPressの場合「カラーマネージメントにオフはない」という考え方なので、ソースと出力プロファイルを設定するのみです。そして、PDF書き出し機能もPDF/X-1aおよびPDF/X-3が新たな設定として加わりました。PDF/X-4については、透明を維持してRIPに持って行ける期待されたPDFフォーマットだと認識しており、現在開発と検証を行っているところです。

--QuarkXPress 8日本語版の開発にあたって苦労した部分はどのようなところですか

私事ですが、去年は開発のために1年間のうち4分の1は日本に来ていたのではないでしょうか。毎日のように電話や電子メールで意見交換を行いましたし、充実した時間を過ごしました。やはり、実際に日本のユーザーにお会いしてみないと、どんな機能が求められているのかを掴むことはできません。それをじっくりとヒアリングし、デンバーに戻って開発部に伝える。去年はこの繰り返しでしたね。

その中で大変だったのは、入れたかった機能が時間的に厳しくなり入れられなかったということです。たとえば、入れたい機能が2つあってどちらかを選ばなければならないとき、時間を考えて諦めた機能もありました。

--では、QuarkXPress 8日本語版はまだ満足度は今ひとつなのでしょうか

いえ、機能も完成度も十分満足しています。もちろん、今回入れられなかった機能を諦めたわけではありませんが、QuarkXPress 8日本語版というプロダクトに関しては長く勝負できるものに仕上がったと思います。実は、すでに今回発売するバージョン8の中に、開発中の機能のモジュールが含まれているんです。そのため、アップデート時には単なるバグフィクスだけでなく、新機能追加もできるような構造になっています。もちろん、これからのアップデートはワールドワイドで一斉に実施されます。

ソフトウェア自体もフレキシビリティであること、それが新しいQuarkXPress 8なんです。生まれ変わったQuarkXPressを早く皆さんにお使いいただきたいですね。

「自信を持ってオススメできる製品」とアピールするクォークジャパン代表取締役須崎弘明氏と宇野氏