かねてからVIA関係者が話していたように、NanoがAtomよりも高パフォーマンスであることは確認できた。ただ、CPU同士を比較するときは、「同価格帯」「同TDP」などの条件でSKUを選ぶ必要がある。動作クロックは1.8GHz(Nano)/1.6GHz(Atom)と近いが、異なるアーキテクチャ間では「同クロック」ということ自体にあまり意味はない。比較として適正かどうかは疑問も残る(※)。

※ VIAはNanoの価格については明らかにしておらず、今回の比較も"同価格帯"の条件が成り立つ可能性はある。ただNanoのダイサイズはAtomの2.5倍以上もあり、普通に考えれば、29ドル(230)/44ドル(N270)というAtomの価格に追いつくのは難しい。せめてワット性能では優位に立ちたいというのが正直なところだろう。

だが現状、Nettop用のAtom(DiamondVille)のラインナップは1.6GHz/4W版の1種類しかなく、現実的にはこれを比較対象にするしかないのだが、TDPも違いすぎるので、今回の比較結果から単純にNano>Atomと結論付けることはできない。Atomがまだ1.6GHz版しかないのは、おそらくはIntelのマーケティング的な事情によるものだろうが、技術的には高クロック・高TDP版を出すのは簡単と思われるので、今後の動きも気になるところだ。

とはいえ、これまでのC7から比べると、同クロックで2倍以上の性能向上も見られ、アーキテクチャの進化は実感できた。VIAファンは期待していいだろう。今後、デュアルコアの投入も予定されており(これは45nmプロセスになる見込み)、これでようやく、IntelやAMDと"同じ土俵"で戦うこともできそうだ。

SandraのCPUテストの画面で、性能の近そうなCPUを表示させてみた。こうして見ると何だか感慨深い……

今回の構図は、パフォーマンス的に見れば、上から降りてきたIntel(Atom)と、下から登ってきたVIA(Nano)が、Nettop/Netbookという新市場でぶつかった形だ。積極的に売り出したいVIAに対して、Intelには「あまり売れすぎても困る」というジレンマがある。そういった姿勢の違いも、VIAには優位に働く可能性はある。

また最後に1つ補足しておきたいのだが、VIAはNanoをNettop/Netbook向けに限っているわけではなく、ターゲットとしてはメインストリームまでも視野に入れている。さすがにシングルコアのままでは厳しいだろうが、それでもCeleron/Sempronあたりのローエンド機に食い込める可能性は十分にある。現在のNettop/Netbook市場は価格競争になりつつあるので、むしろVIAとしては"普通"のデスクトップ・ノートPC市場を狙いたいところかもしれない。

実際にユーザーが入手できる時期についてだが、まずはノートPCでの搭載が先になるようだ。VIAによれば、Nanoの量産は今年9月を予定しているとのことで、同時期にこれを搭載するノートPCが出てくるだろう。現時点で製品を発売するメーカーがあるかどうかは不明だが、すでにC7搭載モデル「HP 2133 Mini-Note PC」を出しているHewlett-Packardなどは期待できるのではないだろうか。

一方、組込み向けのロードマップを見ると、Nanoの量産開始は2009年6月とされているので、搭載マザーボードが市場に出るのはこれ以降ということになるだろう。自作PCでNanoを使いたい人は、もう少し待つ必要がありそうだ。「Nanoを搭載するMini-ITX」「Nanoを搭載するPico-ITX」などと呼ぶのはかなり紛らわしい気もするが、こちらの店頭での発売にも期待したいところだ。