――今回お話を伺っていても、やはりダンカンさんたちたけし軍団の方々と、たけしさんとの信頼関係のようなものを強く感じるのですが。
ダンカン「たけしさんって、動いていないとならない人だから。僕らはキャリアも長いから、たけしさんのために、色々な企画をやりつくした感はある。でも、たけしさんは魚と同じで、泳ぎ続けないと駄目、停まると死んじゃうみたいな人なんで、難しくてもさらに困難な事に挑戦したいというのなら、我々も一番良い形で協力したいんです。『一緒に人生を歩みたい』みたいな気持ちで番組作りをしています」
――ダンカンさん個人としては、どんな風に活動を続けていきたいのですか?
ダンカン「僕は自分でこうなりたい、こうしたいと決めているわけではないんですよ。ただ、すぐ側にたけしさんという凄い人がいますから……。自分が今一番、現状で自分の気持ちを上げられるものを、一生懸命やるというたけしさんの姿を見ていると、男としてかっこいいと素直に思うんです。だから、自分もやりたいこと、やるべきことを見つけた時は、全力で取り組みたいと思う。それだけなんです」
――非常にダンカンさんはたけしさんと似ている気がしますが。
ダンカン「自分とたけしさんの違いは、たけしさんが自分のやりたいことをやると金がついてくる。僕には金がついて来ない(笑)。その差はありますけどね(笑)」
――この夏、ダンカンさんは2本の舞台を演出されますね。どんな作品なんでしょうか?
ダンカン「まず『シェイク~東京大地震 埋まっている人たち~』という作品に関しては、やっぱり自分のなかで伝えたい事があるからやるんですね。今回、何を伝えたいかって言うと、日本はもちろん、世界中で地震が多いじゃないですか。もしかしてこれは神様が人間の罰を与えてるんじゃないかって思って……。地震の話に限らず、何処でも『節約とか、エコとか』って騒いでるけど、実際に視聴率を獲るのは大食い番組ばかり。『あ~、よく喰った』って(笑)。みんななんか、ちょっとおかしい。言ってる事と、やってる事が違うんじゃないかなって思って。これじゃ、神様が何かして人類が滅びる方向に向かうかもっていう……。そういう状況で東京大地震が起きて、何人かの人々が瓦礫の下に閉じ込められるという設定の舞台なんです。そこが、たまたまコンビニだったので、食料や水はあるんだけど、救助隊は来ない。これから、ここでどう生きていこうかというのが描かれる作品です」
ダンカン演出のふたつの舞台
――シリアスなテーマですね。
ダンカン「勿論、テーマはシリアスなんですが、笑いもあります。救助を待っているのですが、コンビニで食料が豊富なので8キロ太る奴も出てきますからね(笑)。でも、人間ってそんな存在じゃないかなって気がするんですよ(笑)」
――もう1作品は?
ダンカン「もう1本の舞台『悪夢のエレベーター』も、やはり密室劇なんです。ひとつの舞台スタイルの稽古という意味も込めて先にやる『シェイク』では密室劇に挑戦してみたんです。僕は大阪公演の演出のほうは、舞台慣れしている主演の吹越満さんに任せて、甲子園球場で阪神タイガースを応援するのに専念したいと思っています(笑)」
――『シェイク~東京大地震 埋まっている人たち~』はダンカンさんのオリジナル脚本で、『悪夢のエレベーター』は何度か舞台化された有名な作品です。演出するに当たり、ダンカンさんの中で、何か違いはあるのですか?
ダンカン「自分のオリジナルでも他人の脚本でも、自分で『わかるな~』という部分があればこだわりはないですね。いきなり『宝塚の演出をやれ』って言われたら無理ですけど(笑)」
――映画監督としてもダンカンさんは活動されていますが、次回作の企画はあるのですか?
ダンカン「企画してます。今度はさわやかな映画をやろうと思ってます(笑)」(※ダンカンの監督デビュー作『七人の弔い』(2005年)はドメスティック・バイオレンスで子供をいたぶる親たちが、金のために我が子の臓器を売ろうとするという超ダークな社会風刺作品だった)
――ダンカンさんの監督するさわやかな映画って想像つかないですね。
ダンカン「とにかく、興味ある物をジャンル問わずにやっていきたいですね。まずは、今回の舞台をしっかり演出したいです。僕は小学生の子供と一緒なんですよ。昨日まで野球を夢中でやってると思ったら、夏には網を持って虫を取りに行く。日が暮れるまで、好きな事をやる。大人になると中々そうは生きられない。それをやらしていただいているだけでも、幸せだと思います」
――今日はどうもありがとうございました。
撮影:岩松喜平