国税庁鑑定企画官室は平成19年度の沖縄県における酒造りの傾向について、こう述べている。「沖縄県では、横型の蒸留器の使用や冷却ろ過を取り止めるといった精製工程の見直し等により、味わいを重視する傾向が見られる」。

ここで注目したいのが、"冷却ろ過の取り止め"である。泡盛は蒸留後、表面に油分が浮いている。熟成と共にこれが泡盛独自の風味を生むと考えられている。琉球王家の尚順が『鷺泉随筆』(ろせんずいひつ)で古酒の香りを鬢付油と例えたり、雄山羊の匂い、白梅香とされるあの香りだ。

昔、泡盛の飲み方として口開けの1杯は捨てたと伝えられている。この1杯で、浮いている油分を除去したのだ。古酒としての独特の風味を求め、老麹仕込みを行う酒造所も増えてきている。麹づくりにたっぷりと時間をかけることにより、蒸留して間もなく、古酒の風味が生まれるそうだ。

「ひとめぼれ」で泡盛を

琉球泡盛はボルドーワインやブルゴーニュワインと並び、世界的に地理的表示が保護されている。これまでの歴史が認められ、泡盛 = 沖縄であること、上で述べた製法がひとつのスタイルとして確立したのだ。伝統が評価される一方で、新しい取り組みで注目すべきものもある。石垣島にある請福酒造は唯一、県内産米100%で泡盛造りに取り組んでいる。

平成5年、東北地方は大冷害によって稲の種籾が全滅した。この時、種籾を増やすために協力したのが、沖縄県である。石垣島では田圃の3分の1をこの植え付けにあて、岩手県の農家を救ったそうだ(当時、この交流をかけはし交流と呼んだ)。

この時の縁で、請福酒造では岩手県から種籾を買い付け、石垣島の八重山で作付けしたひとめぼれを100%使用した泡盛をプロデュースした。これまでのタイ米仕込みに比べて飲みやすくやわらかい味、そして甘みのある香りとなり、話題となった。

会場中央に試飲スペースがある。古酒は特別ブースが用意された

さて、「泡盛ゆんたく会」会場では時間が経ち、試飲を重ねて参加者たちが賑やかにゆんたく(おしゃべり)をしている。泡盛は地域ごとに分けられ、飲み比べることができる。「宮古島は濃厚、本島は辛口……」というように地域ごとの特徴があるそうだ。この点はぜひ、読者の皆さんはご自身の味覚で確かめていただきたい。

バイロンさんの演奏がスタートしたとき、参加者は座り込んでいたが……

やがて、壇上では「沖縄のジェロ」こと、城武端バイロンさんが三線を手に島唄を歌いだした。1曲目は静聴していた参加者も、いつの間にか踊り出していた。

2曲目で早くもこの状態。会場後ろの方まで踊りが始まっていた

このあと抽選会があり、甕入りの泡盛など貴重な品々が出品された。参加者全員に泡盛1本がお土産としてついている。ひと足早い盛夏の夜の宴に、参加者の顔は満足げであった。