1投目から次々とスルメイカを釣り上げているのは、山中丸の呼びかけで参加している常連さん達。常連さん達は4~5名参加しており、他の参加者のお土産用や後の料理講習で使用するスルメイカを確保するとともに、藤井魚聖氏だけでは手が回らない初心者のサポートも務める強力な助っ人なのだ。また、常連さん達がスルメイカを釣り上げることで、スルメイカの群れが確実に船の下にいることが分かり、釣れずに悩む初心者のヤル気を維持することもできる。
スルメイカの群れの反応が船の下から消えると、仕掛け巻き上げの指示が出されて次の群れを探す小移動となり、再び群れが見つかったら合図のブザーが鳴る。そうした行程を何度か繰り返すうちに、慣れ始めた一般参加者にもスルメイカが釣れるようになってきた。最初は、投入が遅れてスルメイカの群れにいち早く仕掛けを送り込めなかったり、絡んだ仕掛けを直しているうちにスルメイカの群れが通り過ぎたり、竿をしゃくり上げてプラヅノを動かすコツが掴めなかったりして、なかなか釣り上げることができなかったようだ。
他の船釣りの経験者がポツポツとスルメイカを釣り上げるようになっても、船釣りの経験が浅い人や船釣りが初めてというビギナーはなかなか釣れずに苦戦していた。しかし、藤井魚聖氏と船長、そして常連さん達が根気よく指導を続けたおかげで、最終的には全員がスルメイカを手にすることができた。
船上での料理も醍醐味
スルメイカ釣りでは、釣ったスルメイカを釣り人でしか味わえない料理で食べられることも大きな楽しみのひとつ。真っ先にスルメイカを釣り上げた常連さん達は、その場でさばいて刺身をつくり、他の参加者に振る舞ってくれた。その身は透明でもちもちとした歯ごたえがあり、甘みが思っていたよりも強くて臭みがまったく感じられない。さっきまで海で泳いでいたスルメイカだけに、これ以上新鮮な刺身はあり得ないのだ。
また、船上に張られたロープにさばいたスルメイカを吊るして"沖干し"や、同量の醤油と酒と味醂を配合したタレに生きたままのスルメイカを漬ける"沖漬け"がつくられた。参加者の中にはタレと漬け込み用の容器を持参し、自分で釣ったスルメイカの沖漬けをつくる人も。釣りも"食"も楽しんでいるようだ。
時間が経つにつれてポツポツと雨が降り出すようになり、お昼を過ぎる頃には土砂降りとなってしまった。レインウエアを着込んでがんばっていた参加者一同だが、スルメイカの反応も薄くなってしまったため、14時30分までの予定が12時30分の早上がりとなってしまった。船上での料理講習も中止となったが、全員が自分で釣り上げたスルメイカの他に常連さん達がつくった沖漬けをお土産にもらたっため、釣りたてのイカを思う存分味わうことができたはず。
この日は、常連さん達が1人40杯ほど、沖釣り経験者らが10杯前後、全くのビギナーは1~2杯という釣果であった。釣りの経験が多い人ほど着実に釣果が伸びるという結果となり、最後の藤井氏のあいさつでも「釣果の差は如何に基本の動作がしっかりできるのかに尽きる」というアドバイスをいただいた。難しいテクニックよりも、基本がしっかりと実践できるように経験を積むことが大切であることを学んだ1日であった。
関東でスルメイカ釣りが楽しめるのは5月から9月頃までで、10月頃からはヤリイカ釣りに切り替わる。その年によって釣りができる期間は変化するので、釣行前に船宿に確認しておこう。