"トライアスロン"と聞いて我々がまず想像するレースは「アイアンマン・レース」と呼ばれているのをご存知だろうか。トライアスロンは、スイム(水泳)・バイク(自転車)・ラン(マラソン)の3種目を組み合わせた競技だが、各種目の設定距離の違いによって複数種のレースが存在するのだ。ちなみに、アイアンマン・レースは42.195kmのフルマラソンと、3.8kmのスイム、180kmのバイクで構成されるレース。一方、北京五輪でのトライアスロンは「オリンピック・ディスタンス」と呼ばれ、スイムが1.5km、バイクが40km、ランが10km、合わせて51.5kmのレースだ。しかしながら、それがアスリートたちにとって限界に挑戦し熾烈を極めるレースであることに違いはないだろう。

そんな過酷な競技の北京五輪日本代表・女子選出枠3名のうち、最初に出場権を獲得したのが上田藍選手だ。5月に行われたアジア選手権広州大会(中国)の女子レースで見事優勝を果たし、北京五輪出場の夢を叶えた。このような過酷なレースに挑む女性とは一体どのような方なのだろうと思い、インタビュー場所である千葉市の稲毛インターナショナルトライアスロンクラブ玄関前に立っていると小柄でボーイッシュな女性が小走りで通りかかり、屈託のない笑顔で「こんにちは」と声をかけてきた。大きな瞳が印象的な彼女こそが上田藍選手その人だ。そんな上田選手に、トライアスロンの魅力、そして勝負への想いをうかがった。

上田藍(シャクリー・グリーンタワー・稲毛インター所属)
1983年10月26日生まれ。京都で生まれ育ち、地元の中学・高校の部活動で水泳や陸上を経験し、高校を卒業と同時に現在の所属クラブである稲毛インターナショナルトライアスロンクラブへ。2005年にはジャパンランキング1位となるなど、精力的に活躍するプロトライアスロン選手

"偶然"の一言でトライアスロンの道へ

身長155cm、体重44kgと決して競技に有利な体格ではない彼女とトライアスロンとを出合わせたものは必然とも呼べる"偶然"の一言だったという。

「中学では水泳部に、高校では陸上部に所属していたのですが、どちらの種目でも思うように結果が出せませんでした。そんなとき、小学校の頃に通っていたスイミングスクールの知り合いの方が、『水泳も陸上も得意だし、マウンテンバイクでここまで通っているぐらいだから、トライアスロンをやってみれば?』と言ってくれた事を思い出して、チャレンジしようと思いました。初めて出場した市民レース(高校生の部)で優勝した時、3つの競技を組み合わせて勝負できるトライアスロンが私には向いていると感じました。その後は行動派の父がトライアスロン専門誌に出ていた山根コーチ(現コーチ)に電話をかけてくれたことで、高校卒業後にプロを目指し上京することになりました」