既報の通り、日本航空(以下、JAL)は8月1日より、東京 - ニューヨーク線を皮ぎりに、国際線ファーストクラスとエグゼクティブクラス、エコノミークラスへ新シート・新機内サービスを導入する。導入を記念して4日、新シートお披露目の見学会が催されたので、ファーストクラスをはじめとした新シートを体感するべく、さっそく取材へ訪れた。
新シートが導入されるのは、燃料効率がよく環境にやさしいとされるボーイング777 - 300ER型機の新機材。8月1日より成田 - ニューヨーク線で、続いて9月13日から成田・サンフランシスコ線で導入がスタートする。2009年以降はロサンゼルス、シカゴ線にも展開する予定とのことだ。
新シートはファースト、エグゼクティブの両クラスで採用されるが、このほかエコノミークラスのシートにも改良が施されている。これに加え、同路線には好評のプレミアムエコノミーも導入される。
まず、最大の注目はその名も「JALスイート」と呼ばれる新ファーストクラスシートだ。名称に表れているとおり"空に浮かぶスイートルーム"がコンセプトで、各シートは上品なカーブを描くシェルに包まれた、半個室のプライベート空間となっている。
シートピッチは約211cm。1人あたりのスペースは、従来のファーストクラスシートより約20%拡張された。新ファーストクラスのシートは窓際に各1、中央に2席の4席を横1列とし、これが縦に2列。合計でわずか8席のみ用意されるという、まさにリミテッドなプレミアム空間となる。
シートを完全に倒してフラットなベッドにしたときのサイズは幅84×長199cmと、シングルベッド並みといえる余裕の広さを確保。通常の「UPRIGHT」ポジション(座位)からボタン1つでフルフラットの「BED」ポジションまで移行する。実際に試してみると、ボタンを押してからフルフラットになるまでの時間はわずか30秒強というところで、待たされる感覚はほとんどない。
フルフラットにして、横になる。筆者は身長176cmだが、もちろん問題なく足を伸ばすことができ、スペースの広さを堪能できた。シート自体がやわらかで質感の高い革張りとなっているのに加え、航空会社として初めてテンピュールの寝具を採用、低反発素材の大型枕や共同開発のJALスイート専用マットレスで上質の寝心地を体感できる。上掛けは羽毛布団。枕も好みにより羽根枕へ変更することもOKだ。さらには肌触りにすぐれた機内用リラクシングウェアも用意されており、(振動さえなければ)飛行機の機内とは思えないほど心地よくくつろげるのが印象的である。
JALのファーストクラスシートがリニューアルされるのは8年ぶりのこと。担当者に話をうかがうと、とにかく今回は「お客様にゆっくり、快適に眠っていただけるよう配慮しました」とのこと。スペースの広さ、心地よい寝具と、たしかに随所に"眠り"へのこだわりを実感することができる。
もちろん、長時間フライトの北米路線となれば眠るだけで過ごすわけでもないから、睡眠以外の時間にも快適さが求められる。今回はその点も強力な改良が施された。シートに座ってまず気づくのが、個人用テレビモニターの大きさだ。なんと19インチの大画面ディスプレイで、これが目の前にあるとかなりの迫力。映画も存分に楽しめることはいうまでもない。
モニターの手前にはスライド式テーブルが設けられている。こちらも幅75×奥行き33cmという余裕の大きさで、パソコン用電源コネクタが用意されているのでビジネスも快適にこなせることだろう。このテーブルはスライド式と書いたように、手前側にグッとずらすことができる。食事や物書きの際にテーブルを手元へ引っ張れるというだけでなく、ちょうど中央辺りまで移動すれば元あったところに一人分の着席スペースが生まれるので、同行者と向かい合っての食事や雑談も可能になるというわけだ。
シートポジションは「UPRIGHT」と「BED」の間にゆるやかなリクライニングの「RELAX」も用意され、好みに応じて位置を細かく調節可能。腰部に振動を送る「LUMBAR SUPPORT」もついている |
テーブル脇にはPC用電源コンセントがあるので長時間のパソコン使用もOK。マガジンラックや小物入れなど収納スペースが豊富にあるのもうれしいところ |
ファーストクラスシートは前述のように左窓際1、中央2、右窓際1の4席で横1列を構成しているが、このうち隣り合った中央の2席は、席間の電動式パーティションを下ろすことでお互いの顔が見えるようになり、横に並んでの食事ができるようになっている。夫婦の二人旅や家族旅行にはうれしい配慮といえ、思い出づくりに一役買うことだろう。
さて、食事の話が出たが、新ファーストクラスでは機内食サービスもブラッシュアップされている。「お好きなときにお好きなものを」をコンセプトとして、ステーキなどのコース料理や、自然と健康にこだわった"京の精進料理"、さらにアラカルトを、文字どおり好みのまま、好きな時間に味わうことができるのだ。
至れり尽くせりの豪華空間。今回はフライトを体験したわけではないが、シートに足を投げ出し座ってみるだけでも、そのステキなイメージを頭に思い描くことができた。実際のフライトを楽しめる方が、正直、うらやましい。