さて、場所を「全国日本酒フェア」に移そう。こちらはデパートの物産展のような雰囲気があり、楽しみながら知識を深めることができるエリアだ。もちろん、試飲コーナーもある。まず見に行ったのは北海道ブースだ。ここは洞爺湖サミットを記念した統一ブランド酒一色であった。

「全国日本酒フェア」の会場前。中はとにかく賑やかだった

北海道ブースでは洞爺湖サミットをPR

兵庫ブースでは、山田錦を使用したお酒の展示に力が入れられていた。同県は日本酒生産量No.1。山田錦の作付面積も全国の8割に達する。高知ブースには、宇宙育ちの酵母を使った「土佐宇宙酒」がずらりと並んでいた。

兵庫県ブースは酒造米をPR

高知県のブースは話題の"宇宙酒"

次は東京産清酒の試飲コーナー。東京に住んでいてもあまり馴染みがない方も多いかと思うは、八王子や福生、府中等に蔵元がある。そして今年の目玉は、"酒サムライ"(日本酒造青年協議会)のブースである。試飲用にインターナショナルワインチャレンジ(IWC)ゴールドメダル受賞酒全13点が用意されていた

東京都のブース。都内にも酒蔵はある

IWCゴールドメダル受賞酒。手前3つが熟成酒である

IWCはヨーロッパで行われる世界最大規模のワインコンペティションで、昨年より本格的に日本酒を審査するようになった。2007年の審査では山廃仕込みや純米酒で高評価が続き、「フルボディタイプが評価される」と噂されていた。しかし、今年は日本側から製造工程やテイスティングに関するレクチャーがあり、純米酒は純米酒として、吟醸酒や古酒もそれとして、造り別にそれぞれの魅力と可能性を評価したという観がある。審査の様子や、ゴールドメダル受賞銘柄については酒サムライのオフィシャルサイトに掲載されている。

酒サムライの今後の活動については、日本酒造青年協議会の会長・市島健二氏との会話から、興味深い話を聞くことができた。5月26日、「『日本酒資格制度(仮称)』創設に関する提言」なる文書がしたためられた。これを要約すると「将来の日本酒の発展のために、国内のみならず海外も視野に入れた、公的な権威ある日本酒の資格制度」創設についての提言である。7月には正式に上申される予定だ。

日本酒を供するのはソムリエ……

日本酒については世界各国で様々な資格があり、日本でも利き酒師という資格がある。これらは日本酒市場の裾野を広げる意味で貢献してきた。だが、取得が容易すぎるという批判もあった。これら以外に世界標準の資格制度というものは必要不可欠であるし、ずっと待ち望まれていた。

7日からは北海道洞爺湖サミットがスタートする。ここで各国首脳を招いてのディナーが催される。外務省担当者によると、「日本酒を提供する機会も当然あると思います」とのことだ。しかし、こういった場面で活躍するのはワインのプロ、ソムリエであったりする。思い出してみると、2000年の九州・沖縄サミットでドリンク関係を担当したのは世界最優秀ソムリエの1人、田崎真也さんであった。

日本の社交界のディナーはワイン中心で組み立てられている。しかしこのままでいいのだろうか。日本の風土や文化を伝えられる日本酒のプロフェッショナルの養成が進めば、世界へ日本(の各地域)をPRする大きな力となるはずだ。

日本酒業界の先行きは未だ明るいとは言えない。しかしここで見てきたように、様々な取り組みが少しずつ芽を出してきている。なかなか知ることのできなかった業界の活動に触れられるきっかけとして、日本酒フェアに期待が集まっている。