あの大女優もエドガー作品のファン!
―――ケイト・ブランシェットがカメオ出演することになった経緯を教えて下さい
エドガー・ライト「彼女とは、ロスで初めて会った。『ショーン・オブ・ザ・デッド』のファンだと知って、主人公ニコラス・エンジェルの元カノであるジャニーン役での出演をお願いしたんだ。あれだけ知名度のある女優なのに、××××する(ナイショ!)という僕らのジョークを理解してくれたよ。彼女の名前は映画にクレジットされていないんだけど、ロンドンで初めて試写を行った際に、何人かの批評家が彼女に気付いたことがきっかけとなって、彼女が出演しているという噂はあっという間に広まったよ。彼女との撮影は一日で終わったけど、お互い楽しんで働けて、とてもいい仕事が出来たと思う」
生粋の映画好きエドガーが斬る現在のハリウッド
―――昨今のハリウッドのリメイクブームについて、どう思われますか?
エドガー・ライト「リメイクに異議を唱えるつもりはないし、中にはいいものもあると思う。例えば黒澤明の『七人の侍』(1954年)をリメイクした『荒野の七人』(1960年)はよかった。でも80年代にリメイクされたホラー作品のほとんどに新しいアイデアが含まれていないと思う。その点、『蝿男の恐怖』(1958年) をリメイクしたデヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』(1986年)、『遊星よりの物体X』(1951年) をリメイクしたジョン・カーペンターの『遊星からの物体X』(1982年)、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956年) をリメイクしたフィリップ・カウフマンの『SF/ボディ・スナッチャー』 (1978年) は、オリジナルに新しい意味を持たせている点が素晴らしく、作る意義があったと感じている。売りは派手なSFXだけで、新しいアイデアの全くないリメイク作品はダメだ。『ハロウィン レザレクション』(2002年) や『テキサス・チェーンソー ビギニング』(2006年)なんて、もう最悪だった(と、笑いながら親指を下にし"バッド"のジェスチャーをする)それに、元がイマイチな映画をまた作っていいわけがないよね」
――ご自身でリメイクを手がけてみたい作品はありますか?
エドガー・ライト「僕がリメイクしたらオリジナルより素晴らしくなると確信しているのは、『ランニングマン』だ。スティーブン・キングの原作はとてもよかったけど、アーノルド・シュワルツェネッガーが主演した『バトルランナー』(1987年)は、ひどい出来だった。あれなら僕の方が上手く作れるね(笑)」
―――2人が大変な映画好きだということが画面から伝わってきます。最後に、映画界入りのきっかけとなったような思い出の映画を教えていただけますか?
サイモン・ペッグ「コーエン兄弟の『赤ちゃん泥棒』(1987年)は、構成がよく練られていると思う。かなり影響を受けたよ」
エドガー・ライト「10代の頃に観たサム・ライミの『死霊のはらわた II』(1987年)かな。これを観るまで、映画は業界にいる人じゃないと作れないものだと思っていた。そんな僕に"カメラを持てば誰でも映画を撮れる"ということを教えてくれた記念すべき作品と言えるね」
こちらの質問に対し、"映画が大好き"という思いがヒシヒシと伝わってくる熱い回答を連発してくれた2人。これほど、映画のタイトルが出てくるインタビューもないのでは? ファンなら、彼らに影響を与えた作品群までチェックすべきでしょう!
エドガー・ライト
1974年04月18日生まれ イギリス、ドーセット州プール出身 34歳
監督・脚本・出演を兼ねた映画『A Fistful of Fingers』('95)でデビュー。その後、『Asylum』『 Is It Bill Bailey?』『Spaced』など数々のコメディ番組の制作に携わり、イギリスで高い評価を受ける。そんな中、ジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』にインスパイアされたパロディ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』('04)が大ヒット。これが縁で盟友サイモン・ペッグと共にロメロ監督の『ランド・オブ・ザ・デッド』('05)のゾンビ役でカメオ出演を果たす。進行中のプロジェクト4本を抱え、現在最も動向が注目される監督の1人。
サイモン・ペッグ
1970年2月14日生まれ イギリス、グロスターシャー州グロスター出身 38歳
TVドラマ『Six Pairs of Pants』の端役で俳優デビュー後、コメディドラマ『Spaced』の成功で知名度を上げる。本ドラマの監督エドガー・ライトと再びコンビを組んだ『ショーン・オブ・ザ・デッド』('04)が大ヒットし、ハリウッドでも一躍注目を集める存在となる。稀代のヒットメーカー、J.J.エイブラムスのお気に入りでもあり、『M:i:III』('06)、『スター・トレック(原題)』('09)と話題作への出演が続いている。
『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン-』
ロンドンのエリート警官ニコラス・エンジェル(サイモン・ペッグ)は、優秀過ぎて上司の反感を買い、田舎町サンドフォードへと左遷されてしまう。そこでものどかな町に不釣合いな熱血ぶりを発揮するエンジェルは、突如起こり始めた連続怪死事件に殺人の臭いを感じ取り、単独で捜査を開始する。しかし、事件の背景には恐るべき陰謀が隠されていた……。
2008年7月5日、渋谷シネマGAGA!他全国順次、ホットにロードショー
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インタビュー撮影:保坂洋也