墜落事故から23年――今もなお問われる報道の在り方

1985年、日本を震撼させた日航機墜落事故から、23年が経ちました。

この未曽有の悲劇を描いた映画「クライマーズ・ハイ」(原作:横山秀夫)が、7月5日に公開されることになり、それに先駆けてローカルメディアネットワークが主催する試写会&トークセッションが開催されました。

豪華メンバーが集合して行われたトークセッション

このローカルメディアネットワーク(以下、LMN)については、若干説明が必要でしょう。

LMNはソーシャルネットワーキングサービス「mixi」内のコミュニティとして設立された新聞関係者の集まりで、メディア界で活躍する講師を迎えての座談会や現役大学生とのプレゼン大会など、さまざまな活動を精力的に行っています。

今回の企画は、『クライマーズ・ハイ』が新聞記者の視点から日航機墜落事故を描いていることから、「23年前のあのとき、メディアが何を伝えたのか。私たちはこれから何をどのように伝えないといけないのか」というテーマでディスカッションするもの。

セッションの参加者は、現役の新聞記者の他、実際に日航機墜落事故を取材した経験を持つ記者や、立教大学社会学部助教の清水氏、地域民俗研究家の山崎氏、また学生の代表として朝日新聞社入社予定の遠藤氏など、バラエティに富んだメンバーが集いました。

しかしなんといってもセッションの目玉は、本作『クライマーズ・ハイ』の監督である原田眞人氏でしょう。イベントは3部構成だったのですが、監督はそのすべてに出席し、本作についての熱い思いを語っておられました。監督自身もかつてメディアに関わって仕事をしていた経験を持ち、また日航機墜落事故をリアルタイムで体験した世代だけに、今回の作品にかける意気込みは並々ならぬものがあるのでしょう。

そして本セッションを聴講したのは、メディア関係者とメディアに興味を持つ大学生たちで、彼らとの質疑応答なども含め、約1時間40分間にわたって熱い議論が展開されました。

今回はトークセッションの模様を交えつつ、映画『クライマーズ・ハイ』をネタバレなしでご紹介していくことにしましょう。

試写会場前には23年前の事故を報道した新聞が置かれ、参加者が自由に閲覧していました

豪華スタッフとキャストによる本作の完成度は「さすが」の一言!

本作のスタッフは実に豪華です。

まずは先ほど書いた通り、監督の原田眞人。『突入せよ!「あさま山荘」事件』といった社会派ドラマで知られる実力派で、今の日本で日航機墜落事故を映画化するならこの人しかないだろうと思えるぐらいの人物です。

そして主人公となる悠木和雅を演じるのは堤真一。この作品の前に見た彼の出演作が「ALWAYS 三丁目の夕日」で、僕の中でのイメージは鈴木オートの親父さんのままだったのですが、今回の映画で完全に塗り替えられました。この人はコミカルな役もシリアスな役もこなせるからすごい。

何を演じても様になるのがスターの証

また、脇には堺雅人や高嶋政弘といった実力派に加え、日本を代表する大俳優山崎努が出演! セクハラ社長という役どころで、これがまたちゃんと憎たらしく思えるのはさすがというべきか。堺雅人は最近よく見るなあと思っていたら「新選組!」の山南役だったんですね。存在感あるなあ。

ホットな主人公・悠木(堤真一)とクールな部下・佐山(堺雅人)。どちらも心の中に熱い思いを秘めながらも、表面上は正反対な顔を見せる二人の対比が面白い

といった具合にスタッフやキャストだけ見ても超豪華な面々で、これで外したら監督大変だぞ……なんていらぬ心配をしていた僕でしたが、内容はちゃんと期待を裏切らない出来に仕上がっていました。

何しろ『タイタニック』は必ず2回に分けて見ることにしているぐらい長時間の映画が苦手な僕が、本作に関しては2時間23分もの長丁場にも関わらず、飽きることなく最後まで集中して見ることができましたからね。 本当なら90分すぎたあたりでお尻が悲鳴をあげ始めるはずなんですが……面白い映画は疲労さえも忘れさせてくれるのです。

事故現場を佐山が取材するシーンは、思わずこれが映画だということを忘れそうになるぐらいのド迫力!