テレビのヤバさは続いてるけど、改善の余地はある

「オリジナルのものを最初から最後まで作る」という新たな目標に向かって走り出した高須氏に、どうせならオリジナリティーが不足気味なテレビドラマに新風を吹き込んでほしい気がするが……。

高須 : 「テレビドラマは怖いです(笑)。だって、映画ならまだ時間をかけられるけど、ドラマは1週間で1話作るわけでしょ? 僕にはそんなパワーはないですよ。それに、ドラマは毎週視聴率が出て、その結果によっては現場のモチベーションが下がったりする。視聴率がすべてじゃないと思っていても、テレビってやっぱり数字を重視しなきゃいけないですからね。それでも気持ちを何とか取り直して現場で頑張ってる演出家を見ると、涙ぐましくって……。僕には、あんな風に現場を引っ張っていくのは無理やなぁ。その点、映画なら撮影中は興行成績も出ないじゃないですか。いまの僕には"楽しい"くらいの方がいいんですよ。その方が発想も湧いてきやすいしね」

そんな話を聞いているうち、高須氏が数年前から各所でよく「テレビがヤバイ」と危惧していることを思い出した。彼はいま、テレビの現状をどのように捉えているのだろうか。

高須 : 「ヤバさは続いてますね。昔に比べて視聴者からのクレーム数も多いうえに、最近はテレビ局じゃなくてスポンサーに直接クレームが来ることが多いんですよ。そうすると、スポンサーは局に『そんな企画はすぐ止めろ』と言う。その結果、局自体も思い切ったことをしなくなってるんです。もうちょっと我慢してくれれば、もっといいものになるのに……。こういう状況では、作り手としては気持ちも萎えるし、縮小しますよね。『どうせダメだろう』って、バカみたいな企画はハナから出さなくなるし、企画自体がどんどんダメになっていってしまう。僕はそれがヤバイと思ってるんです。でも、いまの段階ではどう改善していけばいいのか分からないんですよ」

が、打開策は見つからないまでも、そこに改善の余地はあるという。

高須 : 「ただし、地上波かどうかは分からないですね。DVDが売れたりする時代ですから、ひょっとしたら"ペイテレビだったらいい"という流れになるかもしれません。地上波がNHK化していく中、アメリカのケーブルテレビみたいな感じでね。日本は面白いものも何でも基本的にタダで見られる"昔の水"みたいなものですけど、いまや水だって買わなきゃいけない時代ですからね。いずれテレビも、タダでは面白いものが見られなくなると思いますよ」

そんな中で、高須氏には何か起爆剤となるものを作ってほしいところ。

高須 : 「何かをやれたらいいんですけどねぇ。いや、そうせなアカンとは思ってます」

『賽ノ目坂』

江戸末期、江戸に向かうとある街道にある「賽ノ目坂」という坂に「通りし者は賽の目を振り、出た目の罪人の首に鋸を引くべし」と書いてある看板があった。首を切られるためにだけ待つ罪人は盗賊の又兵衛(ほっしゃん。)と 五郎左衛門(宮川大輔)、武士の宗乃進(秋山竜次・ロバート)3人。旅人が振る賽ノ目に我が命を預ける彼らの運命は?
監督・高須光聖/脚本・高須光聖/出演・ほっしゃん。、宮川大輔、秋山竜次(ロバート)、品川祐(品川庄司)、松本康太(レギュラー)、竹若元博(バッファロー吾郎)、友近、石田愛希、板尾創路
6月14日より神保町花月、ヨシモト∞ホール、ルミネtheよしもとで公開。詳しい上映スケジュールはこちら