いよいよ14日、和光市から渋谷を結ぶ東京メトロの新しい路線「副都心線」(路線記号: F)が開業する。そして開業を直前に控えた10日には、マスコミ向け試乗会が開催された。会場に着くと、自動車メーカーの新車プロモーションイベントを連想させるような賑わいぶりに、やや驚く。ここでは、同試乗会で乗った新型車両10000系の中で発見・妄想(!?)したことをレポートしていく。
200人を超える報道陣でごった返した副都心線試乗会。「このあと2分ほどで、新型車両であります10000系が入ってまいります」という東京メトロ広報のパフォーマンス(?)も聞くことができた。開業後は2度と聞くことができない貴重なアナウンスだ。写真はもちろん新型10000系。車内はモーター音とブレーキ音だけが静かに響く快適な空間だ |
副都心線"試乗インプレッション"
まずは、おそらく都心最後であろう新設路線の乗り心地を確かめてみるとしよう。東京メトロから用意された試乗ルートは、まず各駅停車で新宿三丁目~池袋、そして再度各駅停車で雑司が谷~池袋、そして急行列車で池袋~渋谷、最後に各駅停車で渋谷~新宿三丁目といったルートだ。全体として大きな揺れもなく、できたての軌道でしっかりとした安定感を持って電車は進む。どこの電車にもある"カタンカタン"というジョイント音がほとんどなく、静かにスーッと走っては止まる。東新宿駅への進退時に、左右への大きな揺れとジョイント音を感じる程度だ。これは、急行電車待ちのため退避線に入るためにポイントを渡るため。ここは、立っていたら吊り革に手を添えていないと危ういかもしれない。
新宿三丁目駅の改札口は、高島屋方面改札と新宿三丁目交差点改札の2つ。新宿南口と東口のデパート群を結ぶ駅地下通路によって、高島屋と伊勢丹、マルイが地下で一直線で結ばれる。雨の日のショッピングや、気温が上昇する夏などには重宝するかも |
急行電車は、直接のライバルとなるJR埼京線とほぼ同じスピード。東京メトロ広報によると、同区間の所要時間は、副都心線各駅停車がJR山手線と「同等」、急行がJR埼京線と「同等」ということ。だが副都心線は、地下の急勾配をこえなければならないハンディがあるので、ほとんどフラットな地上を走る埼京線と比べると「ご立派」といえるのではないだろうか。
ちなみに副都心線は雑司が谷~西早稲田間で神田川を地下でくぐるため、地下40mにググッと下がる。そのアップダウンも車中で感じてみると面白い。東新宿から新宿三丁目にかけては、東京メトロで最も急な勾配となる40‰の上り坂(国交省特認! )もある。
競合する埼京浜ルートに新参入
副都心線は、埼玉・東京・神奈川を縦に結ぶ埼京浜ルートとしての役割も担う。池袋口では、東武東上線、西武有楽町線、西武池袋線と、渋谷口では東急東横線と相互直通運転を開始する予定。例えば川越~横浜間などは、今までよりグッと近くなる気配だ。
すでに埼京浜ルートには、JR湘南新宿ラインをはじめとしたJRの都心ネットワークがライバルとしてある。そこに打って出る副都心線にも、求心力があることを垣間見た。試乗会では雑司が谷での駅見学時間もあり、地上に出てみると様々なことが暗示されていた。雑司が谷駅で地上へ出ると、目の前に都電荒川線の線路とのどかな山の手の住宅地があり、その向こうには"ザ・池袋"ともいえるランドマーク・サンシャイン60ビルが望める。
このエリアは、新宿や渋谷の喧騒から解放されたのどかな町並みが広がっているのだ。開業前は静かな駅前だが、都電荒川線沿線の人たちにとっては渋谷・横浜への貴重なジャンクションとなる駅。都電鬼子母神前駅と雑司が谷駅が地上で100mほどの距離で接しており、副都心線のライバルである埼京線や湘南新宿ラインと都電荒川線はダイレクトに乗り換えるすることができない点等を考えると、荒川線沿線住民にとって雑司が谷はうれしい駅になることだろう。