美しい映像を見るためには、コントラストの高さも重要な要素です。コントラスト比が高いということは、それだけ表現できる明るさの範囲が広いということになります。最近発表されたテレビのコントラスト比を比較したのが次の表です。2~3年前には、1000:1程度だったコントラスト比が、ここまで向上したのには驚かされるところです。液晶テレビの中で、松下電器産業のVIERA「TH-37LZ85」のみ、1桁違っていますが、それについては後ほど説明します。
次にプラズマテレビですが、液晶テレビと比べて、非常にコントラスト比が高いということがわかります。自発光式のプラズマでは、バックライトを必要とする液晶テレビに比べて、黒方向の表現力が圧倒定期に高いというのが、その理由です。以前は、予備発光を抑えることが困難で、プラズマでも、リアルな黒は難しかったのですが、最近のモデルでは、それを克服しつつあり、このような数値となっています。ところが、まだ、上には上があります。現在、普通に入手できるテレビで最もコントラスト比が高いのは、ソニーが販売している有機ELテレビ「XEL-1」で、そのコントラスト比は、何と1,000,000:1です。これはさすがに別格ですが、シャープが昨年8月22日に公開した、次世代液晶テレビの試作機では、1000,000:1のコントラスト比を実現しています。
各メーカーの発表しているコントラスト比 | |||
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メーカー | モデル | コントラスト比 | 方式 |
三菱 | LCD-52MZW100 | 3000:1 | 液晶 |
シャープ | LC-52GX5 | 2000:1 | 液晶 |
LC-46XJ1 | 2000:1 | 液晶 | |
LC52EX5 | 2000:1 | 液晶 | |
LC-52RX5 | 3300:1 | 液晶 | |
ソニー | KDL-52V1 | 3000:1 | 液晶 |
KDL-46F1 | 3000:1 | 液晶 | |
松下電器産業 | TH-37LZ85 | 10000相当:1 | 液晶 |
TH-50PZ800 | 30000:1 | プラズマ | |
日立製作所 | P50-XR02 | 30000:1 | プラズマ |
パイオニア | PDP-6010HD | 20000:1 | プラズマ |
ノートPCを野外などの明るい場所で使用した場合に、屋内で使用している場合に比べて、モニターの液晶が見にくくなったという経験をしたことはないでしょうか。これは周囲の明るさのせいで、液晶パネルのバックライトの光がマスクされているためです。直射日光の元でテレビを見るということはあまり考えられませんが、日光が差し込んだり、照明器具が点灯しているリビングでは、やはり、画面内の暗い部分の明るさの差異は、認識しにくくなります(それらの光源の映り込みも考慮する必要があります)。実際の視聴環境に近い明るさでのパネルのコントラストが明所コントラストと呼ばれる数値です。明所コントラストとして発表されている数値は、200ルクスの明るさの下でのコントラスト値となっています(かなり明るめのリビングに相当)。暗い部屋でシアター用としてしか使わないというのなら、明所コントラストを気にする必要はありませんが、普通にリビングにテレビを設置する場合には重要になってくるケースもあります。
暗所コントラスト比を上げるためには、明るいほうを伸ばすか、暗いほうを伸ばすかということになります(もちろん、両方伸ばしてもかまわないのですが)。ただし、テレビなので(照明なら話は別ですが)、あまり明るすぎても実用的ではありません。暗いほうの表現範囲を伸ばしてやって暗所コントラストを上げた場合、明所コントラストにあまり影響はありません。
ただ、明所コントラストの値は、あまり発表されていません。液晶テレビで、明るい場所でもくっきり見えるためのには、バックライトを明るくしてやるか、液晶の開口率を上げるという手法がよく採られます。しかし、明るいところでよく映ればそれでOKかというと、それほど単純ではありません。例えば、量販店の店頭は、実際にテレビが設置されるリビングに比べると、とんでもなく明るい環境です。そこであざやかに映るテレビをそのままの状態でリビングに持ってきたら、かなり鬱陶しい存在になるはずです。もちろん、部屋の明るさに合った画質に調節してやればよいのですが、映しているシーンによっても適切な明るさというのは異なってくるため、いちいち調整するのは面倒です。これらをオート、あるいはセミオートで調整可能なモデルというのも存在します。先日発表された東芝のREGZA「ZH500」「ZV500」「RH500」「CV500」シリーズでは、設置場所の日の出、日の入り時間を把握して、その視聴環境にあわせて自動的に映像調整を行う「おまかせ」モードが搭載されています。また、日本ビクターの「EXE」シリーズは、部屋の明るさとシーンの明るさに応じて、バックライトの明るさをコントロールして眩しさを抑える「E.Eセンサー」「オートピクチャー」を搭載。ちょっと変わった所では、三菱電機の「MZW」シリーズには、部屋の明るさだけでなく、視聴者の年齢層に合わせた調整(例えば、シニアの設定を行った場合、部屋が暗くなっても、さほど画面の明るさを落とさないが、ジュニアを選択すると、大幅に明るさを落とす)を行う「家庭画質モード」が搭載されています。
また、シャープのAQUOSシリーズには、、部屋の明るさや再生ソフトの映像に合わせて、好みの映像・音声調整に設定するAVポジション機能が搭載されています。これは、一種のセミオートでの調整ということになるでしょう。
液晶テレビでは、シーンにあわせて、例えば、暗いシーンではバックライトの光量を落とし、明るいシーンではバックライトの光量を上げごるといったように、バックライトの光量をコントロールすることで、テレビ全体としてのダイナミックレンジを上げる、つまりコントラスト比を稼ぐことができます。松下電器産業のTH-37LZ85のコントラスト比として公表されている数値は、このバックライトのコントロールを含んだ数値です。
このように、テレビセットとしての見え方になってくると、すでに、パネル単体での値である明所コントラストや暗所コントラストという話からは、離れてきてしまいます。実際、多くのモデルでは、シーンに応じてバックライトの光量のコントロールを行っており、さらに、ユーザーからもコントロールが可能という状態です。となってくると、パネル単体でどう見えるかを表す明/暗所コントロールは、パネルの性能を示すものとしては的確でも、テレビ全体の性能を示すものでは、決してないということになります。シャープでは、テレビセット全体のコントラスト比として、「テレビコントラスト」という言葉を使用しています。同社によると「テレビの性能は、パネルの性能と、パネル以外の性能とを掛け合わせたもの」とのことで、パネルの性能は性能で示していくが、テレビ全体の性能も示していくとしています。テレビコントラストは、テレビの最も明るい状態と、最も暗い状態の比を表している数値です。ちなみにRX5シリーズのテレビコントラストは20,000:1、GX5シリーズのテレビコントラストは15,000:1と発表されています。
現行モデルで発表されている明所コントラスト | |||
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メーカー | モデル | 明所コントラスト | 方式 |
シャープ | LC-52GX5 | 900:1 | 液晶 |
LC-46XJ1 | 900:1 | 液晶 | |
LC52EX5 | 900:1 | 液晶 | |
LC-52RX5 | 1500:1 | 液晶 |
一般的に示されるコントラスト比は、パネル単体の暗所コントラストや明所コントラスト。テレビ全体としてどのように見えるのかは、それだけでは分からない