正真正銘のラストスピーチ宣言をした米Microsoft会長Bill Gates氏

米Microsoftの開発者カンファレンス「Tech・Ed North America 2008」が今年も米フロリダ州オーランドで開催されている。6月3日 (現地時間)に行われた基調講演に同社会長のBill Gates氏が登場。スピーチの冒頭で「Microsoftのフルタイムワーカーとして、これが最後の公式の場となります」と宣言した。Internet Explorer 8 (IE8)やSilverlight 2のベータ版提供スケジュールなどを公開しつつ、同氏のMicrosoftとコンピュータ業界にかけてきた半生を振り返った。

Windows 7のマルチタッチ技術を再び披露

現役引退を宣言した後、今年前半に入り急に公式の場での出番が増えた感のあるGates氏だが、Tech・Ed冒頭で上記の「ラストスピーチ宣言」が飛び出し、いよいよMicrosoftを率いる同氏は本当に見納めということになりそうだ。「私はこのTech・Edの場にいることを大変嬉しく思う。それは私が開発者であり、長年にわたってコードを書き続け、業界の変革に携わってきたからだ。また個人的なことをいえば、この場が私にとって1つのマイルストーンになる。Microsoftのフルタイムワーカーとして登場する最後の公式の場となるからだ。17歳から30年以上をMicrosoftに捧げてきた私だが、7月1日からの(Gates Foundationでの)仕事は、初のキャリアチェンジとなる」と同氏は述べ、開発者としての最後のメッセージを聴衆に送った。

同氏は半生を振り返りつつ「スイッチ入力式のインターフェイス、キャラクタベースのCUI、貧弱なメモリとの戦いの時代から考えれば、いまは隔世の感がある。特にツールの世界の革新は驚くべきものがあり、人々はさまざまなプログラム言語から好きなものを選び、(Visual Studioのような)ビジュアル開発ツールと.NET Frameworkのようなフレームワークを用いてリッチでビジュアルなアプリケーションを自由に書くことができる」とPC業界草創期のプログラマーならではの感想を述べた。

「これまで、ソフトウェアは半導体の進化とともにあった。今日、半導体の進化をソフトウェアで利用しようとするなら、例えば並列コンピューティングの概念を採り入れなければならない。64ビットも同様だろう。われわれの目標はこうしたハードウェアの進化によるパワーを最大限に活かし、これらを違和感なく開発者の方々が利用できる仕組みを提供し、次のステージへと案内していくことだ」と、Microsoftがハードウェアとソフトウェア、そして開発者をつなぐハブとしての役割を果たしていくべきだとの見解を示した。

Gates氏の言動からわかるのは、同氏がユーザーインターフェイス(UI)について特別なこだわりを持っているという点だ。Gates氏と同社CEOのSteve Ballmer氏は5月末、米Dow Jonesが主催するデジタル技術カンファレンス「D6」において次世代バージョンにあたる「Windows 7」の技術プレビューを紹介した。そこで示されたWindows 7の1つの特徴がタッチスクリーンを用いたマルチタッチ操作で、Apple iPhoneやMicrosoft Surfaceなどでおなじみの直感的なUIを備えている点が強調された。Tech・EdでもGates氏はこのWindows 7のマルチタッチ操作を紹介、「マルチタッチはあくまで例の1つだが、それがペン入力であったり、あるいはカメラを用いてユーザーの動きや物体を感知してコンピュータがそれに応じた反応をするなど、今後ナチュラル・インターフェイスは劇的なインパクトを持つことになるだろう」と説明。今後もUIの進化の可能性が残されていることを示唆した。マルチタッチではAppleのiPhoneに先を越された感があるが、タブレットPCにこだわり、Windows Vistaではタッチ操作を標準機能へと組み込んだGates氏ならびにMicrosoftならではの意見かもしれない。

International CES 2008と今回のTech・Edで上映された「Bill Gates最後の出社日」のビデオの中で、同社CEOのSteve Ballmer氏が退職慰労金(?)代わりにGates氏に支給を決めた「Xbox Liveの一生涯メンバー権」。会場に来られないBallmer氏に代わり、同氏にそっくりな動きをする「Steve-o-Bot」が登場、メンバー権をGates氏に授与した