ここ最近、統合型チップセットのグラフィックス機能の進化が面白い。4~5年ほど前なら「画像が出るだけマシ」という状態だったものが、今ではWindows VistaのAeroのサポートやHDMI出力といったフィーチャーを備えているのが当たり前となった。それでも性能の方は統合型だから推して知るべし、といった感じだが、予算をなるべく抑えた自作や消費電力を極力抑えた構成にしたい場合は、統合型チップセットというのは実に有り難い存在といえる。

だが、最近になって統合型チップセットのグラフィックスに新しい"活用法"が誕生した。AMDが「Hybrid Graphics」、NVIDIAが「Hybrid SLI」と呼んでいる技術だ。ハイブリッドという言葉からわかる通り、チップセット内のGPUと外部のGPUを連携させ、CrossFireやSLI状態にするというものだ。

そこで今回は、先日リリースされたばかりのHybrid SLI対応最新チップセット「nForce 780a SLI」マザーを使い、Hybrid SLIとはいかなる機能なのか、その内容をチェックしてみることにしよう。

内蔵GPUを利用してSLIを実現するNVIDIAの「Hybrid SLI」

2つのモードを用意

まず、Hybrid SLI最大の特徴は、チップセットと外部のGPUの組み合わせにより、「GeForce Boost」および「HybridPower」と呼ばれる2種類の動作モードが選択できるという点にある。両モードの特徴は以下の通りだ。

  • GeForce Boost
    チップセット内蔵のGPUとグラフィックスカード上のGPUでSLIを構成し、パフォーマンスアップを図るモード。
  • HybridPower
    省電力性を高めるために、ハイパワーなグラフィックスカード上のGPUが必要とされる場面以外はチップセット内蔵のGPUを使って画面出力を行なうモード。

このうち、特にハイエンドGPUを使うゲーマーにとって魅力的なのが後者のHybridPowerだ。GPU性能が高くなるほどアイドル時の発熱や消費電力も馬鹿にできなくなるが、HybridPowerを有効にすると、ゲームで遊ばない時(3D性能が不要なシーン)はグラフィックスカードの電源をほぼカットできる。1台のマシンをゲームと実務、両方に使い回したい場合にとっては、まさに福音のごとき機能だ。

注意したいのは、Hybrid SLIはNVIDIA製ならどんなチップセット/GPUでも利用できる訳ではない、という点だ。特にGPUに関しては制限が多く、GeForce 9800 GX2を始めとする最新ハイエンドクラスか、8400 GSのようなローエンドクラスのみ。現時点でのことだが、人気の高い8800 GTや9600 GTが外されているのは残念としか言いようがない。

さらにOSもVista(32/64bit)のみであり、XP環境では利用できない点も注意が必要だ。

チップセット GeForce Boost HybridPower
nForce 780a SLI
nForce 750a SLI
nForce 730a
nForce 720a
GeForce 8300
GeForce 8200
GeForce 8100
GPU GeForce Boost HybridPower
GeForce 9800 GX2 ×
GeForce 9800 GTX ×
GeForce 8500 GT ×
GeForce 8400 GS ×