PCを買ったらケースの側板すら外さないようなユーザならいざ知らず、およそPCの自作というものに手を染めたなら、PCを使う際にCPUやグラフィックスカード等の温度はしっかりと管理するようにしたい。最近のパーツは低発熱化傾向が進んできたおかげで、ちょっと前ほどには神経を尖らせなくてもよくなったが、一部のハイエンドパーツの発熱量はまだまだ多い。

しかしPC冷却はCPUクーラーやファン1つで劇的に変化するものではない。ケースの選択からファンの設置位置までトータルで考えて煮詰めていく必要があるのだが、ある程度冷却装備を揃えていくと、別の問題に遭遇する。以下のような経験をしたことはないだろうか?

  • ファンを設置したくても、マザーにファンのコネクタがない
  • ファンコン経由でファンを付けたはいいものの、PCから直接監視&制御できなくて困る
  • 温度計を装着しても温度は目視でしか読み取れない
  • 水冷ユニットを着けたはいいが、水温の監視等は別途行なわなくてはならない
  • グラフィックボードの温度監視もしたいが、いたずらに常駐監視ツールを増やしたくない

適切なハードとツールを組み合わせれば、PCの綿密な温度監視や管理は決して不可能ではないが、その環境を構築する手間は半端ではなくなる。ツールをあれこれインストールするのはもちろん、温度センサーを各所に配置したり、ファンコンの設定を行なったりする必要があるからだ。もちろん、こうした手間を楽しむというのも自作PCの楽しみ方の1つだが、スマートにまとめるのは難しい。

ESAとは一体何か?

こうした悩みに対する解答の1つが、NVIDIAが提唱した「ESA(Enthusiast System Architecture)」だ。

ESA環境で必要なものは、ESAに対応したマザーが必須で、それにESA対応の電源ユニットやPCケース、水冷ユニット等を適宜組み合わせていく。ESA対応機器にはそれぞれ温度・電圧・ファン回転数等の監視&制御を行なうコントローラが内蔵されており、USBを通じてマザーに接続され、1つの統合冷却ソリューションとして機能するのだ。

NVIDIAの弁によれば、「HDDに対するATAのように、ESAはケースや冷却機器等に共通の通信手段を与える」ためのものであるということだ。現在のところESA環境のコアになるマザーは「nForce 790i Ultra SLI」等のNVIDIA製ハイエンドチップセット搭載品に限定されているが、ESA自体はプラットフォーム依存ではないため、動向次第では他社製チップセット搭載マザーでもESA対応にすることが可能だ。

ちなみに、ESAはLED等の発光デバイスの管理も行なうことができる。現状ではPCパーツとして供給されていないが、既にDell等が光モノパーツの管理用にESAを導入している。

ESA対応パーツと普通のパーツのの"違い"は?

ESAでどんな事ができるのかをチェックする前に、実際にESA対応パーツと非対応パーツの違いをチェックしてみたい。今回テストしたのは以下の4つのパーツだ。写真を中心にポイントを駆け足でチェックしてみよう。

マザー : XFX「MB-N790-IUL9」

今回ESA環境のチェックに利用したXFX製nForce 790i Ultra SLI搭載マザー。FSB 1600MHz&DDR3-2000対応を果たしたNVIDIA系最新最強のハイエンドマザーだ

MB-N790-IUL9の箱にはひっそりと「ESA」のロゴが。ESA環境を構築したければ、何はなくともこのロゴがついたマザーを調達しなくてはならない

ケース : Thermaltake「VH6001BWS」

ハイエンド向けのケースだけあって内部の空間にはかなりの余裕がある。5インチベイは合計7つあり、うち6つをドライブ収納用に利用できる。底面シャドウベイを撤去し、ファンを設置することで冷却能力を高めることも可能だ

VH6001BWSをESA対応たらしめているのがこの5インチベイに内蔵するESAモジュール。中央にポツンと載っているのはSilicon Labs製「C8051F320」USBマイクロコントローラで、温度等の監視に用いられる。ケースファンもここに接続され、回転数の監視と制御もここで行われるようだ

VH6001BWSをESA対応たらしめているのがこの5インチベイに内蔵するESAモジュール。中央にポツンと載っているのはSilicon Labs製「C8051F320」USBマイクロコントローラで、温度等の監視に用いられる。ケースファンもここに接続され、回転数の監視と制御もここで行われるようだ

電源ユニット : Topower「TOP-1100P10」

今回電源ユニットはTopower製のものを使用。+12Vラインは12V1~V8まであり、合計出力は960Wと気合いの入った+12V出力へのこだわりを見せてくれる

ESA電源のキモは出力ケーブルと一緒に背部から出ているこのUSBケーブル。ケース側のESAモジュールと同様、マザー側のUSBヘッダピンに挿すことで情報の交換を行なう仕組みだ

水冷ユニット : Thermaltake「CL-W0169」

ESA対応水冷ユニットはケースと同じThermaltake製のものを用意。先に紹介したVH6001BWSの5インチベイに格納して利用することが可能だ。タンク~ポンプ~ラジエータまでが1アセンブリになっており、ユーザはCPUに装着する水冷ジャケットとこのユニットまでの配管を行なえばよいだけの設計になっている

水冷ユニット側にもケース側と同じような基板モジュールが搭載されている。水温センサー等の情報をこの基板でまとめた後、最終的にUSBを通じてマザーに送られる。また、水冷ユニットのステータスを知らせるLEDのためにマザー側のESAモジュールとも接続される