デザインのためのリサーチセンターであり、デザインを通して世界を見る場所である21_21 DESIGN SIGHTは、デザイナーをはじめ、企業や職人、エンジニアといったデザインに深く関わる人々はもちろん、一般ユーザにとっても、デザインについて考えるよい機会を提供してくれる場所だ。この21_21 DESIGN SIGHTにおける第3回企画展『XXI c. - 21世紀人』がスタートした。会期は7月6日まで。

21_21 DESIGN SIGHT、3回目の企画展「21世紀人」がスタートした

2007年、東京ミッドタウンに開館して以来、プロダクト・デザイナーの深澤直人氏、グラフィック・デザイナーの佐藤卓氏の2人のディレクターによって「チョコレート」、「水」をテーマとした企画展がそれぞれ行われた。1周年に行われる3回目の企画展となる本展は、ファッション・デザイナーである三宅一生氏がディレクションを手がける。

この4月で御年70とは見えない現役アーティスト、三宅一生氏

本展のテーマは「21世紀人」。わたしたちが暮らす、かつて未来と呼ばれた21世紀には多くの問題がある。本展は三宅氏が「わたしたちが知らず知らずに感じている問題はたくさんあり、そうした問題にわたしたちはどうやって取り組むのか? 若いこれからの人たちはどう考えるかと思い、リサーチに1年を費やしました。そして、たくさんの課題をそれぞれの人たちがどう前向きに考えるか」という思いで、新しい表現に取り組んでいる国内外の作家らとともに本展をつくりあげた。

会場内に入って最初に目に飛び込んでくるのが、吹き抜けのエントランスホールに設置された7メートルにも及ぶ巨大な塔だろう。この作品は参加作家のなかでも最年少の1983年生まれの関口光太郎氏の手による『明るい夜に出発だ』だ。

関口光太郎『明るい夜に出発だ』(前橋/2007)幼虫から蝶になる過程がモチーフになっている

幼虫が塔をのぼり蝶になるストーリーをダイナミックな表現で全体像を創り上げるとともに、細部にはさまざまなストーリーが隠されている

多摩美術大学で卒業制作した『瞬間寺院』と同様に、新聞紙とガムテープを素材に制作されたもの。塔にはストーリーがあり、本体とは別にイモムシのような幼虫がいて、その幼虫がどんどん上っていくともに成長し、蝶となって塔のてっぺんにのぼっている。祝祭的なイメージとともに、夏の日の昆虫採集と、どこか図画工作の楽しさをを思い起こさせるような作品だ。多摩美卒業後、養護学校の教師を勤める関口氏は、三宅氏に見いだされ、本展が実質的なデビューとなった。