もう1つの方法が、ワインを味のタイプで5つのカテゴリーに分け、それに合わせて料理を選ぶというものである。こちらは、セミナーで配布された渋谷さん監修の小冊子「ブルゴーニュワイン ~さまざまなシーンで新たな発見~」にまとめられている。料理との合わせ方についていくつか例を挙げてみよう。

  • 「繊細でフルーティー、絹のような赤ワイン」カテゴリー: 鯖の味噌煮や焼き鳥、ぶり大根

  • 「エレガントでアロマが豊かな、やわらかい赤ワイン」カテゴリー: 肉じゃがやローストビーフ

  • 「力強く、凝縮感とコクのある赤ワイン」カテゴリー: すき焼きやレバー刺

  • 「爽やかで、生き生きとした軽い白ワイン」カテゴリー: 水炊きや生春巻き

  • 「気品と個性のある白ワイン」カテゴリー: 魚貝の鍋物やサーモンのバタームニエル

ブルゴーニュワインの案内書。フランス食品振興会が発行している

同小冊子では、ブルゴーニュワインをより身近に楽しんでほしいという考えから、鶏肉とピーマンの細切り炒めのような中華料理、ハンバーグやエビフライ・クリームコロッケといった洋食なども挙げられている。タレやソースとどのように合うかということまで解説されており、ブルゴーニュワインの新たな可能性を示している。

セミナーで試飲したワイン。それぞれの温度にまで気が配られていた

セミナーで8種類のワインを試飲した際にも、赤ワインと相性のよい料理として和食がいくつか挙げられた。「ドメーヌ・ダルデュイ 2005」に合わせて鰤の煮付けやカレイの煮付けを、「ドメーヌ・マルク・ロワ 2005」には鰻の蒲焼き、「ドメーヌ・デ・ボーモン 2004」にすき焼き(渋谷さんは溶き卵を絡めないで食べるという)などだ。このような提案があると、ブルゴーニュワインを持ち寄ってのホームパーティが盛り上がるだろう。複雑でわかりにくいといわれてきた多様性があるからこそ、和食をはじめとする様々な料理とのマリアージュに出会えるのだ。

ビオワインも登場した試飲会場

さて、次は試飲会場に移動。参加したのはレストラン関係者や酒販店、輸入業者といったワインを扱うプロたちだ。大阪と東京の開催2日間で合計1,191名が会場を訪れた。今回、東京会場には43業者が出展。現地から生産者が来日しているブースが多く、ビオ(有機栽培)の取り組みも紹介されていた。

ビオ認定書を手にした生産者ティエボー・ユベールさん

ブルゴーニュワイン事務局はここ3年のヴィンテージを次のように分析している。2007年が「忍耐が報われた年」、2006年が「魅惑的なブルゴーニュワイン」、2005年が「卓越した年」であると。一般的には2005年が当たり年といわれているが、2007年についても「洗練された味わいで飲みやすく、現在すでに飲み頃」とされている。

さて、試飲会では様々なワインを試飲しながら、生産者に話を聞いた。余談となるが、この中で興味深い話があったので紹介したい。今回参加していたブシャール・ペール・エ・フェスは、1995年にシャンパンメーカーのアンリオ社に買収された。それからというものジョセフ・アンリオ社長(当時)は積極的な投資を行っていく。昨年には約20億円と6年近い歳月をかけた新工場が完成し、気象台も設置された。

試飲会会場。日本でほとんど流通していないレアなワインもあった

これらの目的の1つが、地球の気候変動に対応することにある。温暖化によってぶどうの収穫時期が集中する傾向があるそうで、一度にに醸造するための設備増強が進められていたのだ。温暖化の影響としては、「安定したリッチなワインができやすくなる」(輸出担当者・西山雅巳さん)という。これは一見望ましいように聞こえるが、現地の生産者としては「如何に酸を残すか」ということが課題となっているそうだ。ワインは地球上で育まれるからこそ、気候変動がワイン造りを変えている。ワインの味わいに重みが増すことになりそうな話である。

輸出担当の西山雅巳さん。以前は醸造を手掛けていたという