金城武主演の映画『Sweet Rain 死神の精度』が22日に公開された。監督の筧昌也は現在30歳。いま映像の世界で最も期待されている人物の一人だ。現在放送中の人気深夜ドラマ『ロス:タイム:ライフ』(フジテレビ系)の生みの親で、企画原案、演出、一部脚本も務めている。そんな今をときめく筧監督に話を聞いた。
『Sweet Rain 死神の精度』とは
原作は2005年に単行本として出版された、伊坂幸太郎の短編小説集「死神の精度」。主人公・千葉(金城武)の職業は"死神"。不慮の死を迎える人間の7日間を観察し、"実行=死"か"見送り=生かす"かを決定する。人間の人生や死にはまったく興味なし。彼が「人類最高の発明品」と呼ぶ、"ミュージック"を聴くことだけが唯一の楽しみである。
そんな彼が調査対象として3つの時代に、3人の人間と出会う。孤独で人生に絶望しているOL・藤木一恵(小西真奈美)、仇討ちの機会をうかがう昔気質のやくざ・藤田(光石研)、海辺の店を一人で経営する70歳の美容師(富司純子)だ。ひとりの死神との出会いが3人の人生が思わぬ運命を導き、心温まるラストシーンがスクリーンにあらわれる……。
一"読"惚れした原作の世界観
――ドラマ「ロス:タイム:ライフ」同様、今回の映画も"死"がテーマとなっていますね
「たまたまなんですよね。映画『死神の精度』のROBOT(本作の企画・制作プロダクション)のプロデューサーがBSのオリジナル版「ロス:タイム:ライフ」を見てくれてはいたんですが、"死"がテーマだからというわけではなく、ジャンル指定なんだと思います。ファンタジーというジャンルだから僕にこの仕事を任せててくれたんだと思います。だから、テーマの共通性は偶然なんです」
――原作を読んでの感想は?
「いやあ、もうすごくおもしろい小説だなぁと思いました。映画化したいというよりは、読み物として、一読者として。あまりにも僕の好きな世界観だったから、映像化する、って話を頂いた時も、「よそいき」じゃなくてできるなっていう気はしていました。とはいえ、脚本執筆は1年以上続きましたから、結局、色々な苦労や工夫はしましたけどね」
主演2人の演技との向き合い方
――主人公の金城さんについての印象を聞かせてください
「金城さんは、うーん……おかしな人(笑)。千葉そのものですよ、本当に。ある人がとても嬉しい言葉を言ってくれていて、『金城さんが今まで出演してきた日本映画、ドラマのなかでいちばんかわいらしい、キュートな感じが出ていましたね』と。この作品はコメディの要素もあるので、本来の金城さんらしさが出せたかなと思います」
――金城さんはコメディがお好きなんですよね
「金城さんの尊敬する人は志村けんなので(笑)、すぐにコメディに振るんですよ。ちょっとおもしろいシーンがあると、もっとおもしろくするようにギャグを言ったりとか。僕もどうしようもないギャグが好きだから、それがおもしろくて。笑いの感覚は世代が一緒って大切じゃないですか。何を見て育ってきたかっていうことが。だから、おかしな人でしたね(笑)」
――海外で活躍もされている金城さんから映画作りに関して学んだことは?
「かなりアドリブを挟んでくる方ですね。本人曰く、"香港映画とか台湾映画とか、即興で毎日シナリオが変わっていくみたいなやり方に慣れてるから"、だからできるんだと思います。日本は段取りを踏んで、脚本どおりに計算して芝居を作る。それもすばらしいのですが、映画にはやっぱりその日その日のライブ感も大事だと思いました。とくにコメディ的な要素はライブ感が大事だなと思いましたので、必要なものは取り入れさせてもらいました」
――小西真奈美さんはいかがでしたか
「小西さんはある意味、金城さんと真逆の俳優さん。すごくちゃんと計算されているというか。藤木一恵像を1日目からしっかり作った状態で来てくれていました。映画が小西さん、光石さん、富司さんの物語から成り立っているので、2時間の作品でゆったりとキャラクターを作っていくということが今回はできなかった。それぞれ物語にあるオチの鋭さを出すためには、キャラクターをはっきり出してくださいということは前もって伝えていましたので、しっかり作ってきてくれたんだと思います」