クモの糸を駆使して摩天楼を飛び回るスピード感あふれる映像と、喜びや悲しみに満ちたストーリーで全世界的な大ヒット映画となったサムライミ監督の『スパイダーマン3』。そのゲーム版が、今回は携帯用ゲーム機であるニンテンドーDS向けにリリースされた。あの小さな画面で、ビルを飛び移る快感が再現できるのだろうか……。いやいやどうして、スピーディーで楽しいアクションゲームに仕上がっていますよ。

タッチペンでコンボを極める快感

DS版『スパイダーマン3』は、"スパイダーマン"を操って、火事で閉じ込められた人を助けたり、敵を倒したりしながら街の平和を守る横スクロールアクションゲーム。もちろん、ストーリーは映画の「スパイダーマン3」がベースとなっており、スパイダーマンの恋人MJワトソンをはじめ、敵であるヴェノムやサンドマンが登場するなど、ファンにはたまらない内容となっている。しかし、本作の真髄はタッチペンで多彩なアクションを繰り広げられるところ。ニンテンドーDS向けソフトとしては、これまでにも『スパイダーマン2』や『アルティメット スパイダーマン』などがあり、「ああ、あのシリーズか……」と思う人もいるかもしれない。スパイダーマンの多彩なアクションを楽しめるという点ではこれまでの作品も同じだが、タッチペンがそれほど活かされていないという不満があった。しかし本作では、その点を大幅に改良。グラフィックもよりリアルな描画にパワーアップされるなど、最新作の名に恥じない1本となっている。

横スクロールアクションとなるDS版の『スパイダーマン3』

クモの糸で摩天楼を飛び回れる爽快感をDSでみごとに再現している

操作の基本は、[十字]キーの「左右」で移動、「下」でしゃがみ、「上」でジャンプだ。ジャンプ中に「上」をもう一度押すと"糸"を手から発射して、映画でおなじみの空中を飛び回るアクションを実行できる。相変わらず、糸がどこにくっついているかは謎だ。ミッションが発生していないステージでは、時間の制限がなく飛び回れる。DSながらニューヨークの街並みを3Dで巧みに再現している点も注目。移動は左右のみで2D横スクロールアクションと同じだが、時折カメラワークによって景色が変化するため、飛び回っているだけでもけっこう楽しいのだ。

天井に張り付いての移動などスパイダーマンならではのアクションが満載だ

敵のいる方向にタッチペンをスライドさせるとパンチを繰り出すなど、攻撃をタッチペンで行うのが最大の特徴だ

タッチペン(下画面)はおもに攻撃を担当。敵のいる方向にタッチペンをスライドさせるとパンチを繰り出し、下から上にスライドさせると上に蹴り上げるといった具合になる。画面を素早く2回タッチするとクモの糸を繰り出し、敵を捕まえられる。敵を蹴り上げて糸で捕まえ、手元に戻してさらにパンチ……なんて連続技もちょっと慣れれば簡単にできる。蹴り上げて戻して蹴り上げて戻して、といった感じでヨーヨーのように操るのも面白い。とはいえ、敵もそれほど甘くはない。クモの糸が通じない敵もいるため、力押し一辺倒ではすぐにこちらが倒されてしまう。そこはやはり、海外のゲーム。難易度はピリリと辛めである。

下から上にスライドさせると敵を空中に打ち上げられる。タッチペンで実行できるアクションは実に多彩だ

敵のいる方向にタッチペンを2回叩くと蜘蛛の糸を出して敵の動きを止められる

ヒーローポイントを稼いで「アビリティ」を強化

ゲームの基本的な流れは、ステージ内にいる敵を倒す、人を助けるといったミッションを順番にクリアしていくというシンプルなものだ。しかし、ミッションをこなすだけでは、手強くなってくる敵に対処できない。ここで重要となるのが、敵に対して連続攻撃を決めたときやステージ内に隠されたエンブレムを入手したときに獲得できる「ヒーローポイント」。これはお金のような存在で、クモの糸による移動速度の向上や、素早くタッチペンで円を描くことで繰り出す強力なキックといった新しい「アビリティ」と交換できる。強力なアビリティほど多くのポイントが必要となるため、ステージ内でいかに連続攻撃を決めるかが重要となってくる。ただの力押しではなく、コンボを成し遂げるための攻撃テクニックを覚えなければ、ゲームに行き詰ってしまうわけだ。

ヒーローポイントを貯めれば新しい攻撃方法や能力を手に入れられる。ゲーム攻略において重要なポイントだ

敵を倒すだけではなく、ステージ内でピンチに陥っている人を安全な場所まで運ぶミッションも多い

とはいえ、「アビリティ」が充実すればミッションのクリアがカンタンになるか、といえばそういうわけでもない。ミッションには制限時間があり、これがゼロになるとそのミッションは最初からやり直しになってしまう。この制限時間の設定がなかなかに厳しく、テンポ良く進めていかないと「アッ」という間に終了してしまう。敵を倒していく場合も、1体がちょっと遠くに離れてしまった……なんて些細なミスでタイムオーバーなんてことも珍しくないのだ。ただ、失敗によるペナルティはないので、失敗を繰り返してミッションの流れをつかむのが基本的な攻略法といってよいかもしれない。