側面版の内側に黒いパネルが装着されている。遮音効果があるそうだ

つづいて今度は内部構造をチェック。まず側面版を外すと、その側面版の裏に黒い板が張り付いていることがわかる。これはポリカーボネート製の遮音パネルとされている。この遮音パネルは、両側面版に加え天面カバーにも装着されている。

そしてシャーシ。シャーシは材質が1mm厚の硬質スチール。ケース全体の質量では9.2kgとなる。ケースにおいて、側板の堅さ、厚み、質量は制振という側面からも重要。PC利用時のいわゆるビビリ音を解消してくれる。Soloはその点で適度な質量といえる。そして10kg前後なら、自作PCの視点から見ればちょっとした移動に難儀するほどの重さではない。

メインストリーム向けとしては十分な内部スペース

次はマザーボードスペース。Antecはミドルタワーケースであり、ATXマザーボード以下のサイズを搭載することが可能だ。背面パネルから拡張ベイ後端までの幅は約26cmと若干詰まっている。このあたりがコンパクトさに関連してくるのだが、同時にグラフィックスカード選びには注意が必要になってくる。ATI、NVIDIAのエンスージアスト向けグラフィックスカードはカード長が26cm超あるためだ。搭載できるグラフィックスカードは、ミドルクラスあるいはハイエンドでも中位までということになるが、インターネット上では加工を施すなどの対策(メーカー保証外となるので注意)でエンスージアスト向けカードを搭載している例も見られる。

拡張スロットは7本。Soloでは、基本的に手回しネジ、そして緩めても脱落しないネジを多く採用しているが、ここの拡張カード固定用のネジは通常のインチネジだ。実際のところ何の問題も無い。むしろ古いタイプの自作ユーザーならドライバー不要の着脱方式よりも安心感を受けるところだろう。

5インチベイは表面からも見える4基で、内部的にはガイドレールを利用する方式を採用している。HDD用シャドウベイにはフロントパネル側からアクセスできる。まず側面版を外し、上中下3つのツメを解除するとフロントパネルは右を軸に開く。シャドウベイの位置に現われるのは2つのエアフィルター。このエアフィルターも手回しネジ2つで今度は左を軸に開く。HDD用シャドウベイにアクセスできる。ここまでの作業に(ネジを堅く締めすぎないかぎり)ドライバーは不要だ。

フロントパネルは右を軸に開く。完全に取り外すことも可能

エアフィルターは左を軸に開く。ここも着脱が可能

このシャドウベイに搭載可能なHDD数は最大4基。実は2つの搭載方法が用意されており、もうひとつの搭載方法を用いた場合は最大3基となる。まずはガイドレールとトレイを用いたスタンダードな方法。トレイに設けられたHDD固定用の穴は4カ所で、それぞれ軟らかなシリコングロメットが装着済み。つまりHDDがラバーマウントされることになり、HDD動作時の振動はかなり抑制される。

HDD搭載用のトレイ。専用ネジを用いる

実際に装着すると、シリコングロメットによってHDDが浮くかたちになる

ゴムサスペンションでHDDを吊るした状態。ゴムというとヤワな印象だが、装着してみたところそこまで不安定さはない(同社によれば、千切れないよう改良されたとのこと)

もう1つの方法はずばりゴムバンド止め。ゴムのサスペンションにHDDを挟む方法だ。こちらの場合、HDDの振動はほとんどケース側に伝わらないことになる。好みの方法を用いれば良いのだが、実際にHDDを動作させてみた印象としては前者のトレイ式でも十分であるように感じた。

冷却面を紹介しよう。Soloに標準搭載されているケースファンは背面に12cmのものが1基。回転数を3段階で制御するコントローラも搭載されている。追加可能なファンはフロント側で、エアフィルター裏に9cmファン×最大2基を搭載可能だ。ハイエンドゲーマー向けケースと比べれば少ないが、一般的なメインストリーム向けには十分であると思う。

12cmファンを1基搭載。3段階に回転数をコントロール可能だ

少し電源にも触れておこう。Soloは基本的には電源レスで購入できるケースだ。よって手持ちの電源を再利用することで投資を抑えることも可能だ。逆に手持ちで電源が無かった場合、その際には電源がセットとなった「SONATA PLUS550」などを選択すると電源メーカーとしても評価の高い同社の電源(ケーブル着脱式)を割安で搭載できる。なお、ケースと電源を同一メーカーで揃えることはフィッティングの面でもメリット。基本的にはケース開発時より自社電源でテストされているからだ。

メインストリーム向けニーズをしっかり押さえた製品

Soloシリーズは、BCNが調査しているPCケース実売ランキングでも1位なのだそうだ(執筆時点)。こうしたデータからもSoloは高い評価を得ていることがわかる。また、良く聞くSoloの評価のなかでもいちばんのポイントは静音性である。今回、各所をチェックした上で、ケース自体、そしてHDDなどの搭載方法、吸気方法など、静音設計の良さが見えてきた。

もちろん静音性能だけではなく、ミドルタワーとしての十分な拡張性、そしてシンプル志向で落ち着きあるデザインも支持される理由だろう。ケースというのは自作PCパーツのなかでも長いこと使い回すパーツのひとつである。もちろん、各個人で重視するポイントやデザインの好みも分かれるが、Soloはオールマイティな性能かつ堅実なデザインとして好感が持てる製品だ。