ライバルが新製品を出したら、すぐさま対抗する製品をたたみかけるようにリリースする、というのがNVIDIA vs AMD(ATI)のバトルにおける長年のお約束なのだが、最近のNVIDIAはちょっと様子がおかしい。AMDの「ATI RADEON HD 3000」シリーズが、全モデルでDirectX 10.1 & PCI Express 2.0対応を果たしたというのに、あわてるそぶりすら見せない。その理由は定かではないが、G90系のコアを使った新モデルの出足が依然好調だからとも考えられる。昨年の「GeForce 8800 GT」に始まり、同じコアを使った「8800 GTS」、そして先日突如としてリリースされた「8800 GS」と、とにかくスーパーミドルレンジから準ハイエンドにいたるラインナップが徹底的に強化されている。
となると次は、GeForce 8800 GTX/Ultraの上位となるスーパーハイエンドか……と思いきや、NVIDIAは新シリーズ「GeForce 9」の第1弾として「GeForce 9600 GT」を投入。ミドルレンジラインのさらなるテコ入れに着手し始めたのだ。今回、GeForce 9600 GTを搭載したリファレンスボードを入手できる機会に恵まれたので、早速パフォーマンスチェックを行ってみた。
GeForce 8600 GTの2倍のスペック
まずはGeForce 9600 GTの概要からチェックしていこう。まず性能の肝となるストリーミングプロセッサは64基。さらにGeForceシリーズのミドルレンジとしては初めてメモリバス幅が256bitに強化されるなど、スペック的には、GeForce 8600 GTSをそのまま2倍に拡張したものといえそうだ。性能的に差のつきすぎてしまった「8800 GT」と「8600 GTS」のギャップを埋めるためのスペックアップという見方もあるが、値段が下がり、ミドルレンジクラスにおいて強烈な存在感を放ちはじめた「ATI Radeon HD 3850」に対するカウンターパンチの役割を担っていると考えた方が妥当かもしれない。
GeForce 9600 GT |
GeForce 8800 GT |
GeForce 8800 GS |
GeForce 8600 GTS |
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製造プロセス | 65nm | 65nm | 65nm | 90nm |
コアクロック | 650MHz | 600MHz | 575MHz | 675MHz |
メモリクロック | 1.8GHz | 1.8GHz | 1.4GHz | 2GHz |
搭載メモリ | 512MB GDDR3 | 256/512MB GDDR3 | 384MB GDDR3 | 256MB GDDR3 |
メモリバス幅 | 256bit | 256bit | 192bit | 128bit |
ストリームプロセッサ | 64 | 112 | 96 | 32 |
動画再生支援機能 | 第2世代 PureVideo HD | 第2世代 PureVideo HD | 第2世代 PureVideo HD | 第2世代 PureVideo HD |
インタフェース | PCI Express 2.0 | PCI Express 2.0 | PCI Express 2.0 | PCI Express 1.1 |
DirectX | 10 | 10 | 10 | 10 |
コアの基本設計は「GeForce 8800 GT」と同じ世代のものを使っているため、PCI Express 2.0にも対応している。だが、これは同時にDirectX 10.1には非対応ということも意味している。これに続くGeForce 9シリーズのラインナップも当面はこの設計をベースに展開されていくだろうことを考えれば、まだまだNVIDIAはDirextX 10.1をスルーするつもりでいるらしい。今のNVIDIAは、市場動向の予測や自社製品によほどの自信があるのだろうか?
基板自体の形状や外見はGeForce 8800 GTとかなり似たものを採用している。ただし、裏面の配線パターンを見るかぎりは、電源部の回路がかなりシンプルになっている感じである。ボード全体を覆うGPUクーラーのカバーや6ピン電源の配置なども共通である。スペックアップは嬉しいものだが、これでGeForce 9600 GTは小型のPCケースに入れにくいGPUとなってしまったのは少々残念なところである。
それでは、次ページからベンチマークテストによる性能評価を行ってみよう。