モバイルテレビは数年前から話題に上っているが、実際のところそれほど急速に発展していないのが現状だ。その理由は、技術ではないようだ。
MediaFlo、DVB-Hともに、最新の仕様を利用したモバイル放送の質は誰もが「高いレベル」と同意する。受像機側も、画面、バッテリ持続時間などは大きな障害になっていないようだ。画面については、サイズは大きいほうがベターとしながらも、ユーザーは慣れるだろうというのが全体としての意見だった。解像度は文句なしのレベルだが、これはバッテリ持続時間を犠牲にする。だが、バッテリ持続時間も実際のところそれほどの障害ではないようだ。
参加者によると、国により異なるが、携帯電話でテレビを視聴する時間は15分~45分。イタリアで実装を手がけたスイスNagravisionによると、イタリアでは20分が平均だったという。それも、ひげを剃りながら観るなど、予想外のシーンで利用していることが分かったという。利用場所については、韓国では自宅が25%、通勤時など移動中が50%だったという。自室にテレビのない若者など、自宅で利用している例は多いようだ。
ある参加者は受像機について、携帯電話に限らず、持ち歩ける端末として「新しいカテゴリが生まれることも考えられる」と語った。
課題としては、周波数帯、ビジネスモデル、対応端末のラインナップ不足や価格、エクスペリエンスなどが上がった。
ビジネスモデルでは、サブスクリプション形式などが考えられるが、携帯電話のインタラクティブ性、パーソナル性を生かした広告モデルにも期待が集まる。だが、具体的な方向性はまだ見えていない、というのが印象だ。
使い勝手としては、シンプルなUIが求められているようだ。また、デジタルテレビガイドにより利用が改善した例も挙がった。モバイルテレビ周りのソフトウェアを開発するドイツConvisualによると、同じ番組を視聴している人同士のチャットや、投票などインタラクティブな要素を加えると利用率が改善したという。
このように課題はあるが、挑戦もはじまっており、世界的にモバイルテレビが当たり前となる時代は必ず来る、というのが全員の意見だった。
このラウンドテーブルには参加していなかったが、Mobile World Congressで取材したTelecom Italiaは、チャンネル数、課金などでまだまだ模索の最中と明かした。1年半前にモバイルテレビサービスを開始、現在端末は3機種あり、順調にユーザーを増やしているという。人気はサッカーなどスポーツで、視聴時間は当初の予想より短いという。現在、チャンネル数は8種類、課金はサブスクリプション制だが、チャンネルではラインナップを増やし、課金では時間ごとの課金オプションも加えたいという。