日本ではワンセグが人気を集めているが、世界的に見ると携帯電話を利用したテレビ放送の受信はまだはじまったばかりだ。モバイルテレビ規格「MediaFlo」を推進するFlo Forumは12日、スペイン・バルセロナで行われた「Mobile World Congress 2008」にてラウンドテーブルを開き、加盟企業11社の代表者が世界的にみたモバイルテレビの現状や課題について語った。
11社が集まったラウンドテーブル |
モバイルテレビは現在、MediaFloのほか、「DVB-H」「T-DMB(Terrestrial-Digital Media Broadcasting)」などの規格が世界に混在している状態だ。地域的にみると、MediaFloは、土台技術を開発した米Qualcommの本拠地である米国で強く、DVB-Hは欧州で優勢だ。MediaFloの商用サービスとしては米Verizon Wirelessがあり、米AT&Tも提供開始を控えている。実証実験は日本でも行われているほか、英国などで進んでいるという。DVB-Hは、3 Italiaなどイタリアで複数の事業者が商用サービスを開始しているほか、DVB-Hを強力にプッシュするNokiaの本拠地フィンランドでも商用サービスがはじまっている。
Flo Forumは、MediaFloを推進する業界団体で、仕様開発や標準化団体への提出などを行っている。加盟企業は約100社。
標準の乱立は必至?
規格に絡んだ最新の動きとして、欧州連合(EU)が2007年に発表したDVB-Hの支持があるが、これについてMediaFloの会長、Kamil Grajski氏(米Qualcommエンジニアリング担当バイスプレジデント)は、「DVB-HはEU推薦だが、採用義務付けではない」と強調する。FLO Forumをはじめ、いくつかの団体がEUに対し、技術をひとつに統一することは時期尚早であるとする意見を提出したという。
実際、多くのモバイルテレビ関連企業はさまざまな規格に対しての技術やソリューションを提供しており、マルチ標準状態は続くと見ているようだ。アクセス管理技術を提供する英NDS Technologies、トランスコーダなどビデオ圧縮技術の米Media Excelなど、ラウンドテーブルに参加したほとんどの企業が、自社技術をDVB-Hにも対応させている。中でも、動画分野の草分け的存在である米PacketVideoは会期中、モバイル向けレシーバー「PV Mobile Broadcast Receiver」を発表した。会場では、同レシーバーと米Appleの「iPhone」「iPod touch」でモバイルテレビを視聴するデモを披露していた。このレシーバは、Media FLOのほかDVB-H、WiMAXによる通信などをサポートするという。