NTTドコモ代表取締役社長 中村維夫氏 |
NTTドコモは、2007年度第3四半期(4-12月の9カ月通算)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比2.1%減の3兆5,220億円、営業利益は同7.7%減の6,250億円、税引前利益は同7.6%減の6,287億円、当期純利益は同6.7%減の3,765億円となった。「ファミ割MAX」、「ひとりでも割50」など、2007年夏に開始した新たな割引の影響で減収、減益が続いているが、通期の業績予想に対する進捗率は売上高が75.5%、営業利益は80.1%。同社の中村維夫社長は「概ね、想定通り」と評し、通期の営業利益見込み7,800億円は「射程内に入った」とした。
第3四半期(10-12月)の総合ARPU(1加入あたりの月間平均収入)は前年同期比5.7%減の6,290円。割引により音声ARPUが同12.2%減の4,090円となったが、パケットARPUは同9.5%増の2,200円だった。総合ARPUは第1四半期(4-6月)が同4.9%減の6,560円、第2四半期(7-9月)は同2.5%減の6,550円だったので、これらの状況を反映して、4-12月累計での携帯電話収入は971億円の減となっている。
同社は2006年10月にMNP(ナンバーポータビリティ制度)が開始されて以来、MNPによる他社への既存ユーザー流出に悩まされるとともに、事実上の新規参入者ソフトバンクによる価格破壊戦略に押され、純増シェアでは、2006年度第3四半期にソフトバンクに抜かれ、2007年度に入ってからも、第1-3四半期とも3位に甘んじている。この第3四半期には、同社がいよいよ反転攻勢に向けた仕掛けを打ち出してきた。総務省のモバイルビジネス研究会の報告を受けて導入した新しい料金制度と、満を持して投入した"決定版"ともいえる新製品群の905iシリーズだ。
新料金プランでは、端末価格は高くなるものの、基本使用料が安くなるとともに割賦販売も取り入れた「バリューコ-ス」と、ほぼ従来と変わらない「ベーシックコース」を設けた。同社では当初、新制度が適用される905iシリーズ以降、「バリューコース」が全体の5割以上を占める、と想定していた。ところが実際には、94%の購入者がバリューコースを選択するとともに、同コースのユーザーの76%は分割払いに集中、24ヶ月払いが52%、12ヶ月払いが24%で、2007年1月15日には同コースの契約数は200万を突破した。このような動きの影響で、販売手数料は491億円減ったという。これまでの"慣習"である販売手数料をできるだけ抑制することを図った同社の狙い通りの結果といえる。
そして、データ伝送速度を高速化したHSDPA(FOMAハイスピード)、海外でもそのまま使えるGSMローミング、ワンセグ受信機能を標準搭載している、いわば"切り札"の端末である「905iシリーズ」は非常に好調だ。「12月には100万台、1月にも200万台売れている」(坪内和人取締役執行役員)状況だ。中村社長は「正直、ここまで売れるとは思っていなかった。一部の機種は品切れになり、特に関西では、需要を読み間違えメーカーへの発注量が少なかった。反省している。春商戦に向け905iと、この1月下旬に出した705iは多数投入する。店頭に(端末を求める)行列ができたのは久しぶりでうれしかった。手ごたえを感じている」と話す。