マイクロソフトは、多様なネットワークサービスを無償で提供するサービスプラットフォームである「Windows Live」の正式版を2007年11月8日から提供開始した。Windows Liveは、同社のインターネットを介したサービス提供の新機軸になるとともに、新たな広告事業の基盤でもある。同社のネットワークサービス事業と広告ビジネスの新たな戦略について、Windows Live分野を牽引する、笹本裕 執行役常務 オンラインサービス事業部長に聞いた。
エコシステム的に作られている「Windows Live」
――Windows Live正式版の投入から1カ月あまりが経過した。ここまでの状況は
Windows Liveは、サービスの供給が順調に進んでおり、2008年早々にも、ディストリビューションパートナー経由での提供も始まる。「Windows Live Messenger 2008」「Windows Live フォトギャラリー」などの特徴的なサービスに対する、エンドユーザーからのフィードバックも好意的だ。「Windows Live Messenger 2008」には、VoIP機能が加わり、完成形に近づいた。パソコン上から電話をかけることで、コミュニケーションツールとしての利用シーンが広がる。また、パソコンにさらに付加価値を与えるものであるともいえるだろう。Windows Liveは、2008年の1-3月期、マイクロソフトの会計年度での第3四半期には、一気に結果が出てくるものと期待している。いまのところは新たなサービスへの認知度を向上させるための期間だが、利用状況は予想を上回っている。
――Windows Liveをプラットフォームとして展開しているのはなぜかWindows Liveブランドの、さまざまなソフトをパートナーも利用できるように、エコシステム的に作られていることが、Windows Liveの大きな特徴だ。メールやメッセンジャーはMSNから、Windows Liveブランドで投入することになった。「MSN hotmail」「MSNメッセンジャー」が、「Windows Live hotmail」「Windows Liveメッセンジャー」になったのだが、なぜわざわざブランドを変えるのか、との意見もあった。しかし、マイクロソフトだけが成長するのではなく、パートナーとともに成長することが重要だと考えている。Windows Liveがプラットフォームだからこそ、メールやメッセンジャーのサービスは、他のサイト、たとえば、GyaOのような事業者も利用することができる。つまり、Windows Liveのサービスは、従来のOSの売り方に似通ってくる。Windowsは、NEC、富士通などのパソコンにプリインストールしてきたわけだが、それと同じように、Windows Liveのサービスも、たとえば「A社」のブランドでも良いということになる。MSNだけの世界を脱し、我々とパートナー双方に利益をもたらす構造になる。
――動画共有サービスの「Soapbox on MSN Video」はどのような役割を果たすのか「Soapbox on MSN Video」は、同じく第3四半期に本格化させる予定だ。エンドユーザーがコンテンツをつくるCGMは、ユーザーのWebサイト滞在時間を長くできるので、より重要になる。そこで、SNSとSoapboxには期待しており、コミュニティとして力を入れていきたい。広告により収益を上げていくビジネスモデルを成長させるには、滞在時間と用途を掛け合わせて相乗効果を上げる必要がある。Soapboxは、すでに米国では運用実績があり、まったくのゼロからのスタートではないので、良いエンジンになるだろう。
――「Soapbox on MSN Video」の展開では、何を重視しているか競合に対する優位性と差別化要素、この二つの軸でサービスを展開していかなければならない。マイクロソフトの場合、Silverlightをはじめとする自社のソフトウェアをふんだんに活用することにより、ユーザーの利便性を高めるとともに、いっそう充実したコンテンツを提供することができるだろう。Silverlightは、Flashより圧縮データの転送速度が速い。映像の乱れも少ない。プロの製作物については、データの質の高さが求められる。