目指すはオンライン販売でファンと身近に
実はフィアット カントリー マネージャーのティツィアナ アランプレセ氏が、1992年に伊Fiat Group Automobiles(フィアット グループ オートモービルズ)に入社後、最も力を入れて取り組んだプログラムの中に、eコマースへの進出ストラテジーがある。1990年代後半の、いわゆる"ドットコムバブル"の最盛期の挑戦が目ざましかったようで「イタリア本国でバルケッタ(BARCHETTA)を、インターネットから本当に買えちゃうサービスを立ち上げました。オンラインで最初から最後までやり取りして、高い車を売ってしまうわけだから、当時としてもものすごくパイオニアスピリットで、実はとってもがんばったけど、結局インターネット上では15台しか売れなかったんですね。でも、これはエクスペリメント(実験)として本当によかったし、何度もネット上でお客さまとリクエストのやり取りをしながら、最高のノウハウを覚えられたと満足しています」と同氏は語る。
日本で"フィアット"というブランディングの位置づけを考えた時に、決してドイツ車のように多くはないものの、心からフィアットを愛してサポートしてくれるカーオーナーの存在があり、日本では特に、こうしたコアなファン層にピッタリ合うコミュニティーを築き、もっと大切にしていく必要があると、同氏は実感しているという。「面白いのは、日本人ってうんちくが大好きでしょう…。例えば、チンクエチェントのことなんか、私よりもっともっと詳しく知ってる人がたくさんいたりする。本当に熱狂的なファンだっていっぱいいるんです。こういう人たちとは、オンラインで直接どんどん話して近づいて、もうダイレクトにポーンとFiat 500だって買ってもらいたいですね」と、同氏は笑いながら話す。
いよいよ今春、Fiat 500の国内発売に合わせて、全国各地のディーラーを中心に、まだ詳細は明らかにできないそうだが、イタリアとチンクエチェントの魅力を満喫できるような楽しいイベントが続々と開催されて、日本でフィアットのブランディングを全力で強化するプログラムがスタートするという。だが、こうしたオフラインでの展開に加えて、特別にインターネット上で力を入れて、Fiat 500の大々的なPRをすることも予定されているようだ。
同氏は「ドッとテレビでCMを流すようなやり方じゃない。もうだれもがフィアットにばかり乗っている…、そんな大きなことをして、メジャーになることを目指したりはしない。インターネットだからこそできる、小さいけどすばらしいフィアット、だからファン仲間で楽しく盛り上がれるコミュニティーを作っていきたい」との期待を抱いていることを語ってくれた。
実はフィアットのオンライン展開は非常にレベルが高く、特設サイト上には、まるで映画監督の気分で、BGMに乗せて、50万通りにカスタマイズした自分好みのFiat 500を走らせることができる「500 Video Configurator」や、Fiat 500に乗せてクリスマスカードを届けられる「500's way」など、アイディアあふれるサービスが多数提供されている。現在は大半が英語とイタリア語のみのサービスだが、今年は日本語でのオンラインサービスも、かなり充実してくるようだ。
「チンクエチェントは、普通の人に普通に売っていく車ではない。どんどん楽しいことに挑戦して、クリエイティブな売り方を日本ではしていきます。携帯電話でインターネットをしながら、Fiat 500が買えちゃった…、ツタヤの店頭でFiat 500を買ってきちゃった…なんてことも、今年は起きちゃうかもしれませんよ」と話す同氏を見ていると、底抜けに明るいイタリアンパワーが、これから日本を騒がせていきそうな微笑ましい予感に包まれた。
サソリのアバルトも今夏復活!
さて、今春はFiat 500のデビューが国内の大きな話題となりそうだが、フィアット車をベースにしたチューニングメーカーとして名を馳せる「アバルト」(Abarth)ブランドの日本復活も、今夏に予定されていることを、最後にお伝えする。すでに昨秋にイタリア本国で発売された「グランデプント」(Grande Punto)ベースの「グランデプントアバルト」(Grande Punto Abarth)が、左ハンドル&マニュアルトランスミッション(MT)という、本国と同じアグレッシブな仕様のまま、日本では特別限定リミテッドエディションの形で販売されるビジョンが明らかにされており、あのサソリロゴマークを冠したスポーティーな走りを楽しみに待っていてほしいと、同氏は語っている。
「フィアットには、ぜひ自分の大切な世界がある人に乗ってほしい。Fiat 500は、おしゃれに楽しく、できればカブリオレでクールにね。逆に、Small&Furiousで、パワフルな走りにパッションをもってる人は、夏まで待ってアバルトにね」と、同氏はインタビューを締めくくった。間もなく日本語でも、アバルトの特設サイトが立ち上げられるようだ。