ITアーキテクト泣き笑い

ITアーキテクトが実際に行う仕事の内容を簡単に説明しましょう。まずコンサルタントが策定した経営戦略を情報システムへ実現可能な形で落とし込む設計を行います。その設計に従ってプロジェクトマネージャへシステム全体構成と工程の概算見積、技術的リスクポイントなどを説明し、プロジェクト計画に反映してもらいます。同時にITスペシャリストへはネットワークやセキュリティなどの必要な技術について、アプリケーションスペシャリストへは業務アプリケーションについて、それぞれ検討/設計の依頼をします。開発が始まると、個々の担当専門職種のメンバが主役になるので、ITアーキテクトはシステム全体からみた技術的な指導/調整を行います。

ITアーキテクトにとって、プロジェクトの失敗とは、政治的な圧力に屈しポリシーの大幅変更が発生してプロジェクトが破綻したり、場当たり的な効率化によってバランスを崩したシステムを開発してしまった場合などです。反対に成功とは、効果的で関係者全員に喜ばれるシステムを完成させることであり、その成功の中にも最高の技術を盛り込めたときが無上の喜びを感じる場面だと思います。

情報システムの社会における影響度が増し、そのニーズが多様化するなかで、開発工程の自動化/簡略化による短納期化が進んでいる現在、システム実現性検討、システム化計画策定をになうITアーキテクトの存在は、ますます重要になってくるものと考えられます。

ITアーキテクト≠ITコンサルタント? システム化計画のケジメの付け方

「ITコンサルタント」という言葉がありますが、ITアーキテクトはITコンサルタントとは違うのでしょうか? ITSS V2の定義にもあるように、コンサルタントとITアーキテクトは異なる職種です。コンサルタントはあくまで支援と提言が中心作業であり、決定は顧客企業になります。

一方ITアーキテクトは、システムの実現可能性に責任を持つのですから、システム開発における関与姿勢が大きく異なります。まさに「システムが動いてナンボ」の世界となります。ただし、ITコンサルタントの業務をITアーキテクトが行ったり、同一人物が両方の職種を兼任することは大いにあり得ます。これは、ITコンサルタントやITアーキテクトという言葉を役割と捉えるか、職種と捉えるかによって見方が変わってくるからです。

執筆者プロフィール

高橋規夫 TAKAHASHI Norio
日立製作所に入社し、研究所においてOLTP技術研究に携わった後、分散オブジェクト技術、J2EE技術、EDI-B2B技術、XML技術、SOA技術の研究、製品開発、システム設計に従事。鉄鋼業界、金融機関、自治体等の分野におけるシステム開発のテクニカルアドバイザとして活躍。現在、日立コンサルティング マネージャー。情報処理推進機構(IPA) ITアーキテクトコミュニティ委員。