システム/プロジェクトの全体を見ることができるITアーキテクトとは、いったいどのような特性を持った人物なのでしょうか。この職種に「向く人」「向かない人」という観点で考えてみましょう。
物事を大枠で捉えられる→向く人 / 細かい違いが気になる→向かない人
物事の全体像を捉える際に必要なことは、物事の細かい差異は気にせず大枠で分類し、一括して扱うということです。
大規模システムになると技術や機能、要件等の構成要素が膨大な数になってしまいます。とても1人では検討しきれないのですが、複数人で分担したのでは、全体としての整合がとれなくなってしまいます。そこで構成要素の抽象化を行い、分類してその枠で検討を行う必要があります。
たとえば、「この機能とあの機能はほとんど同じ目的で利用されるので、共通機能として一括して考える」とか、「この課題とあの課題は同じ種類だから、同じような解決策で解けるだろう」といった思考方法が有効になります。このような考え方で、システムを「このような機能とあのような機能と…から構成される」と分類すれば、全体を俯瞰して検討することができます。
割り切りができる→向く人 / 優柔不断→向かない人
全体的な方向性を決定する場面において、常に詳細が明確になっているとは限りません。このような情報が不十分な場合でも、リスクを考慮して最善の策を選択し、決断することがITアーキテクトに求められます。決断を行った以上は割り切って進める決断力が必要になるのです。
説得力がある→向く人 / 説得しようとしない→向かない人
上記のような決断を日常的に行う立場にいるITアーキテクトは、なぜそのような判断をしたか説明できるようにしておかなければなりません。たとえ決断が間違いだったとしても、原因が明確であれば同じ間違いを犯さずに済むからです。
好奇心旺盛→向く人 / 壁を作りたがる→向かない
物事を全体的に見るためには、見方を変えてみることも必要です。好奇心を持ってさまざまな角度から眺めてみることにより、より本質が見えてくることが往々にしてあります。限定的に決め付けた考え方をしていると物事の一面しか理解できませんし、網羅性にもかけてきます。そのため、考えもしなかった問題が突然顕在化するということがあります。
バランス感覚が良い→向く人 / 専門が偏っている→向かない人
技術的に専門性を持ち、その分野に関して誰にも負けない知識と経験があるということは、技術者として誇りにすべきことです。ただし、ITアーキテクトという職種にとっては、極端な偏向は命取りになります。あくまで目的を達成するための最適な構成/計画を作成するという、全体最適を目指すものだからです。
持久力がある→向く人 / 飽きっぽい→向かない人
ITアーキテクトはプロジェクトの全体にわたって技術的な方向性を指導していく立場にあります。大規模であれば2 - 3年の長期に渡るプロジェクトも存在します。そのような中で、一貫してポリシーを保持し、反対意見や圧力にめげずに粘り強く相手を説得していくことがITアーキテクトには求められます。技術方針がコロコロ変わるようでは、プロジェクトの成功はおぼつかないからです。