KDDI田中氏「PCとケータイの間隙埋める新市場の創出を」

アッカ・ワイヤレスの木村正治社長

アッカ・ワイヤレスの木村正治社長は「アッカ・ワイヤレスは、商用のための実証実験をすでに始めている。インフラ提供者だけでなく、さまざまな適用分野の事業者とパートナー関係を築き、エコシステム的な取り組みをしている。無線通信の実績があるNTTドコモからサポートを受けるが、あくまで、経営には、アッカ・ネットワークスが新規(参入事業者)として主体的にやっていく。総務省の免許交付方針は、新規参入者が主導的に運営できる条件を示している。(今回、無線の分野で)純粋に新規といえるのはアッカだけだ。アイピーモバイルの一件で、新規参入者は危ないのではとの声も聞かれるが、資本でも安定している。ドコモとの協力関係で、確実に低廉なネットワークを構築できる」と述べ、ウィルコムに対しては「次世代PHSの新たな技術で世界的にどう展開していくのか」、KDDIには「3GとWiMAXのすみわけはどうするのか。オープンの仕組みはどうなるのか」と質問した。

ワイヤレスブロードバンド企画の田中孝司社長

ワイヤレスブロードバンド企画の田中孝司社長は「(主軸にするのは)パソコンか携帯電話かどちらなのかとの点だが、WiMAXはまずパソコンからはじめていくが、それだけでは数量的にきびしい。現状では、モバイルパソコンをB5以下の大きさの製品とすると、年間200万台程度であり、ワイヤレスのビジネスをやっていくにはきびしい状況になる。そのような中で、この帯域を有効に利用するにはどうすればよいか。パソコンと携帯電話の間には空間ができようとしている。携帯電話に対してはこれ以上の機能はいらない、との志向が生まれ、いまのパソコンでは、持ち運ぶのにはまだ重いという意識がある。WiMAXによる新しい市場ができないと、この間は埋まらない。ここが成功のポイントなのでは。この空間を捉えるのは。パソコン、携帯電話のどちらでもない」と話す。

「MVNOはオープンにやっていく。データカードは自社ブランドのものを出すが、それ以外は、新たな市場を立ち上げていきたい。3Gは携帯電話を中心にしていく。京セラからの出資を受けたのは、安定的な株主を確保するためだ。KDDIのウィルコムへの10%出資は、旧DDIポケットを売却する際に依頼を受けたもので、経営には関与していないし、するつもりもない」(田中氏)

孫氏「PHSは2GHz帯を使ってはどうか」

孫氏はさらに次のように述べる。「PHSは劇的な純増数をしていない中、さらに何千億円の投資をすることは、国民の資産である電波を有効利用することにならないのではないか。これから先、世界市場でPHSをどれだけ売っていけるのか。日本発の技術を活かしたいといっても、中国で使用されているPHSは、ほとんどが中国メーカー製だ」「ウィルコムは、どうしても2.5GHz帯でなければならない理由はあるのか、PHS技術が優れているということなら、アイピー・モバイルが返上した2GHzの周波数帯を使うのは不可能なのか」

「仮に、割り当ての2枠ともWiMAXになった場合、一方は20MHz幅で、他方は30MHz幅になる。当初から差があるのは不公平だ。しかし、両者ともWiMAXであれば、ガードバンドが不要になり、それぞれ30MHzずつを使えるようにすることができる。一方がPHSになると、ガードバンドが必要になるので、30MHzと20MHzになる。国内で初めてのWiMAXが、事実上最初から1社独占になるのでは、国民にとって、不幸なことになる。公平な条件で2者がWiMAXを展開できるようにしたほうがよい」(孫氏)

喜久川社長は以下のように反論した。「あくまでフェアに、ということであれば、現行のPHSが使用してる1.9GHz帯は、携帯電話と同様の使い方ができるのは20MHz幅であり、(帯域の調整を経て)今後は16.5MHz幅に減る。今回のワイヤレスブロードバンドは、日本のためのものだ。PHSの高度化には、20MHz幅くらいは必要であり、1.9GHz帯には余裕がない。この帯域を十分に有効利用したうえで、我々は主張している。PHSは2GHz帯に行けばいいのではとのことだが、IMT-2000にPHSは入っていない。だがWiMAXは入っている。WiMAXが2GHz帯に行くということもできるのではないか。中国のPHSは、端末は中国メーカーが作っているが、LSIや部品は日本メーカーが担っている。累計では1億台くらいを目指したい。それには日本の技術が必要になる」「ソフトバンクは、ディズニーとMVNOをこれからはじめるとのことだが、我々はすでに実績がある。携帯電話事業者はMVNOには消極的だが、当社はまじめにこつこつとやってきた。PHSの海外での普及活動をしてきたし、これからもやる。強い気持ちで、きちんと技術を開発していきたい」

また、孫氏は「MVNOについては、もし、我々が免許を取れて、ワイヤレス(ブロードバンド企画、以下同)やアッカが取れなかった場合、希望があれば、両社に対し提供する。これが逆の場合、両社は我々に提供してくくれるのか。皆が落選にならないようにすることも考えていいのではないか。アッカと我々が組むこともありと思っている。ワイヤレスと組む選択もやぶさかではない。これだけやる気があるのに、やる気を発散できる場がなくなるのは困る」との見解を示し、最終的に4社で2枠の争奪戦をするのとは別の解決策を提示した。

「公平性」「透明性」強調、2者「当確」に釘刺す

孫氏がKDDIとウィルコムに対し、かなり攻撃的に厳しい質問を繰り返した。また、アッカ・ワイヤレスの木村社長も両社には、いくつか疑問を呈していた。これに対し、ウィルコムの喜久川社長は逐一反論していたが、ワイヤレスブロードバンド企画の田中社長は慎重な姿勢で答弁、孫社長の論議とはややかみ合わない面もみられた。一方で孫社長は、アッカ・ワイヤレスに対しては「MVNOをきちんとやろうとしている姿勢は評価したい」とするなど好意的で、OpenWinとアッカが提携してWiMAXの免許取得を目指してもいいのではと提案した。この点について、木村社長から明確な回答はなかったが、NTTドコモ色を薄めようとしているアッカと、KDDI色が濃いワイヤレスに対してのソフトバンク/イー・アクセス連合の距離感が明白になった。

また、KDDIが、同社の筆頭株主である京セラと組んで、ワイヤレスの株式のほぼ半数を握っていることと、両者がウィルコムの40%の株主であることから、今回の割り当て2枠がKDDI陣営とウィルコムに付与されることになれば、「同一のグループにだけ与えられることになる」と問題視し、この点への疑義を徹底して強調していた。さらに、「リングに上がってもいないうちから勝敗が決まるなどありえない」と指摘、この2者の「当確」「有力」との報道による、「流れ」ができることに釘を刺した。免許付与にあたり、「公平性」「透明性」を重視すべきとの主張を公の場で広く訴えることができたのはソフトバンク/イー・アクセス連合にとって効果があったといえるだろう。