一部の展示車両では内部見学が可能なだけではなく、中で飲食可能なものまである。なんと、上野駅を模した16番線ホームでは駅弁と飲み物まで売っていて、面白い。本当の駅のように老若男女入り交じった雑踏までできていた。
この展示方法を最初に知った時、正直私は「以前の所蔵先で大切にされていた展示車両内で飲食可能にするなんてとんでもない」と思った。しかし、お客さんを乗せて、まるで現役であるかのように輝く展示車両を見て、列車は人を乗せてこそ本当の魅力が引き出され、輝くのかな……と考えるようにもなった。何より、お客さんが本当に楽しそうな顔をしている。体験型を謳うこの博物館では、鉄道の楽しさを体験してもらう方法としてこれ以上のものはないのだろう。しかし、他の鉄道資料館では車内を荒らされて公開を中止した例もある。鉄道博物館の稀少な車両が、そのような目に遭わないよう願うばかりである。
蒸気機関車C57 135、転車台で一周
次にC57 135が乗せられている中央の転車台に目を向けると、回転が行われるところだった。転車台の中央には解説員が立って何か話していたが、残念ながら2階では何を言っているのかわからなかった。そのうち、ポーッという汽笛とともにおもむろに回りだす転車台とC57 135。転車台が回るときのピィ、ピィという警戒音はなく、転車台の中央に立つスタッフの解説と一緒に静かに回る。汽笛を鳴らして180°、また汽笛を鳴らして270°、あれれ、10分弱で一周してしまった。転車台は機関車の向きを変えるためのものなので、一周してしまう転車台にはあっけにとられてしまった。「360°してしまっては、転車台にのせる意味がないじゃない! 」と思ったが、そうだ、ここは駅ではなく、博物館だったんだ。……こんな風に勘違いしてしまうくらい、博物館内には実際の駅のような雰囲気が漂っていた。
鉄道歴史年表に見る鉄道博物館の歴史観
ヒストリーゾーン2階には、1825年の世界最初の公共鉄道の開業から現在まで、全長75mの年表が展示されている。展示が「国鉄の所管の変遷」の表より始まっていることからもわかるように、ここで扱っているのは鉄道の歴史の中でも、主に日本の国有鉄道の歴史である(ただし、技術史的に重要な事柄については私鉄の情報も取り上げている)。
特に、新幹線につながる技術の流れには「新幹線マーク」がつけられ、大正時代に標準軌への改軌論や改築試験があったこと、昭和12年の仙山線でのロングレール使用など、1つひとつの技術の積み重ねが、昭和39年の新幹線開業へとつながっていったということがよくわかる。年表が丁寧でわかりやすいだけに、0系新幹線の実車の展示が先頭部分しかないことが本当に惜しい。ちなみに、この年表の真下、1階の大型ガラスケースの中には御料車6両が展示されている。