共産主義の理想よ、もう一度?

仮想世界での「自由と平等」をめぐる考え方でも、創想王国はセカンドライフと異なる立場をとっている。創想王国は、現実の近代都市をモデルとしており、愛好者が内部の各都市を往来でき、様々な文化的雰囲気と刺激的なビジネスの息吹を感じられる仮想空間。だが、バーチャルな社会経済体系構築の過程で、「弱肉強食」や「適者生存」のルールを持ち込むことをなるべく避けている。その代わり、創想王国に入れば、住民全てが即、同じ数量のバーチャル資産を獲得するのだ。バーチャル資産とは、住宅や家具、衣服、最低限の生存に必要な貨幣などである。それはあたかも、失われた共産主義の理想を仮想世界でもう一度夢見ているかのようだ。

住民のその後の活動、なかんずく商業取引などに対しても、創想王国は指導と規範をもって臨む。土地は仮想世界における「総体的発展計画」によって放出される。住民は申請を行って土地を獲得することはできるが、ほかの仮想世界のように土地を任意に囲い込むことは禁止されている。こうして略奪や悪意の競争、独占などの現象を抑え込み、バーチャル社会経済体系の「公正で秩序ある発展」を目指そうというわけだ。

インフラ面での整備など、本格的普及に課題

これまで中国におけるバーチャルワールド関連市場の実情、既存企業やサービスの特徴について述べてきた。言うまでもなく、中国のみならず、この分野はインターネット世界の新興分野で、模索中のアプリケーションでもある。この新興分野における技術、運営、ビジネスモデルなどの面で大成功を収めたケースはいまだ少ない。ポータルサイトや検索エンジンサイトのように、ナスダックに上場するような企業もまだ現れていないのが現実だ。

中国国内では、バーチャルワールド関連市場自体が未形成だ。マスメディアやゲーム愛好家も、仮想世界への認識については、個々人によってかなりの隔たりがある。一般のゲームやコミュニティと混同している人もいる。ブロードバンドの接続速度が十分なものではないという中国のインフラ面での課題もあるため、上述のような政治的社会的な規制を別にしても、仮想世界が本格的に普及するにはまだまだかなりの障害が存在していると言わざるを得ないのである。