既報のとおり、10月7日(現地時間)、独SAPが、BI(Business Intelligence)における有力ベンダーの1つであるBusiness Objects(BO)を買収することを発表した。両社は現在、買収作業を進めるとともに、買収後の事業戦略等を協議している。では、今回の買収提案は、どういった背景から生まれたのか。また、買収後の事業運営はどうなる見込みなのか。本誌は、日本のBI市場に対する見解と併せて、SAPとBOの関係を、Business Objectsのアジア・パシフィックおよび日本担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャである、キース・バッジ氏に聞いた。
--10月にSAPによる友好的買収が発表されたが、なぜ提案を受け入れることになったのか。また経営統合は現在どの程度進んでいるのか
SAPがBOに対してM&Aをしようとした理由は、両者の戦略が合致し、補完関係になる部分が多かったからだ。当社の株主に対して良好な案件だと考え、彼らの提案を受け入れた。次の段階として、SAPは、当社の株の公開買い付けするとの意思表明をしているが、これはまだ始まっていない。というのも、当社は複数の国で上場しているため、それぞれの国で承認が必要になる。そのための作業を鋭意進めている最中だ。
--SAPが、BOを買収した理由は
SAPの基本的な戦略は3つある。まず、ERPをはじめとする彼らの伝統的な製品をさらに成長させること。次に、中堅、中小企業向け市場での成長を図ること。さらに、ビジネスユーザー、つまり、さまざまなデータを基に意思決定する人々を支援することだ。
SAPが我々に焦点を当てたのは、上記のビジネスユーザーというターゲットが、BIの対象領域と重なるためだろう。将来的には、さらに多様なソースからデータを分析する、企業のパフォーマンス管理までを求められる。
--経営統合により、どんなメリットが得られるのか
経営統合は現在、友好的に進んでいる。我々が、なぜポジティブで、友好的でいられるかといえば、BOとSAPの2社はいずれも、それぞれの分野のリーダーであり、手を組むことで、互いの強さを倍増させることが望めると考えているからだ。
経営統合は、2008年第1四半期(1-3月期)には完了できる見通しである。重要なのは、(統合完了後も)BOが独立した企業として活動し続けていくということだ。事業は技術的にオープンということであり、サポートの環境も変わらない。我々がナンバーワンでいられたのは、オープンな姿勢という哲学があったからで、これも不変だ。実際、BOではこれまで、IBM、オラクル、SAPなど、マルチな情報環境をサポートしてきたし、今後も続けていく予定だ。また、今回の件については、顧客からの反応もポジティブだった。BOがSAPグループの一員として、強さを発揮できるものと期待されている。
統合完了後は、SAPから、4、5億$程度の資産、1,000人に上る要員が移行してくるとみている。これは非常に重要なことだ。なぜなら、財政的な安定度が向上し、さらに研究・開発のための投資を増やすことができるからだ。顧客にもたらすことのできる価値もさらに大きくなる。
--日本市場における影響は
日本でも、今回の経営統合は、SAP・BOの双方の顧客にとって有益だ。われわれのBI技術がSAPに加わることで、SAPの顧客は、経営分析能力が向上すると見込まれる。一方、BOの顧客は、インメモリ技術など、SAPの技術を利用できるようになる。事業戦略の詳細はこれからの課題と言えるが、重要なのは、顧客からの両社への投資は保護されるということだ。