10月30日と31日の2日間、タイ・バンコクでNokiaのプライベートイベント「Forum Nokia Summit 2.0」が開催された。主催はNokiaの開発者向けプログラムであるForum Nokia。スマートフォンプラットフォーム「S60」関連の展示やビジネスパートナーなどによる講演などが行われた。その中から興味深い展示内容をレポートする。

S60による新機能や開発環境のデモ

NokiaなどがスマートフォンのOSに採用するS60のブースでは、新機能や開発環境の展示を行っていた。最も注目されていたのは先日発表されたタッチパネルUI(ユーザーインタフェース)への対応だ。Appleの「iPhone」が本格的に採用したタッチパネルUIは、ここにきてスマートフォンやマルチメディア系端末のUIとして一躍注目を浴びるようになっている。タッチパネルUIに対応したS60の実機はまだ登場していないため、会場ではスライドやビデオによる概念の説明が行われていた。

タッチパネル操作への対応により、例えば画面上の操作はこれまでのキーボードだけでなく、指先などで直接操作することが可能になる。またTactile Feedbackという機能を搭載し、画面を押したときに反応を返すことでキーを操作したような感覚を与えることができるとのこと。これにより、指先でタイピングする際のキーの押し間違いを防ぐほか、アイコン表示されたボタンを確実に押したことが体感的にわかるようになるという。

アプリケーションがタッチパネルUIに対応することにより、たとえば時計のアラームが鳴っている最中に画面を2度たたくことでスヌーズ設定を解除するなど、本物の目覚まし時計と同じような操作を実現することも可能になる。また手書き文字入力などを容易にするため、指先だけではなくスタイラスペンの利用も可能だ。

さらにセンサー機能にも対応。画面自体を動かすことでアプリケーションを操作することができるようになる。理解しやすいデモとして紹介されていたのが、机の上に置いた携帯電話がかかってきた際、電話を裏返しに置くと着信音がサイレントモードになり相手には電話に出れないというメッセージが流れるというもの。食事中やおしゃべり中に電話に出たくない相手から着信があったとき、即座に携帯を裏返すだけで対応できるわけだ。その他にもゲームなどさまざまな応用が期待でき、携帯電話の新しい使い方も提唱できるだろうとのことだ。

実機がないためスライド/ビデオとスタッフによる説明が行われていた

センサー機能はゲームやエンターテインメントにも応用が可能という

ちなみにS60のUIはこれまで一貫してキー操作のみを基本としていた。今回のタッチパネルUI対応はiPhoneなどへの対抗と見ることもできる。しかしNokiaは2004年に開催されたNokia Mobility Conferenceの席ですでにS60へのタッチパネル対応をアナウンスしており、同社のタッチパネルUIプラットフォーム「Series 90」(2006年に開発中止)の機能をS60へ取り込んでいく予定とされていた。すなわち、画面タッチ対応UIの開発は当時から行われていたものであり、iPhoneの登場に対して急ぎ開発されたというものではないと考えるべきだろう。

2004年にNokiaが発売した「Nokia 7710」(参考写真)。プラットフォームはSeries 90、スタイラスペンによるタッチ操作と手書き入力に対応している。このプラットフォームはこの1機種が市場に出ただけで終わり、各機能はS60へ統合されることになった