国内上場において資金調達額で圧倒する銀行業
次に、産業別に各上場企業の状況をみてみよう。まず海外上場企業33社のうち26社が、ネット社会到来以前に主流だった、製造業などを中心とする伝統的産業である(資金調達総額の86.4%)。これに対し、広義のIT産業は3社(同4.1%)、サービス業は2社(同4.4%)、生物工学・ヘルスケア産業がそれぞれ1社、その他ハイテク産業が1社となっている。海外上場では、伝統産業が上場件数と資金調達金額の双方で主役になっていることがわかる。
国内上場企業でも40社のうち29社が伝統的産業だった(資金調達総額の20.5%)。また、5社がサービス業(うち銀行が4社、資金調達総額の78.0%)、広義のIT産業が5社(同1.6%)、生物工学・ヘルスケア産業が1社となっている。
数をみると伝統的産業が圧倒的だが、資金調達額ではサービス業にはかなわなかった。資金調達面からみると、国内市場は、銀行などサービス業の"ドル箱"となっている。
ところで、今年第3四半期に上場した73社のうち、約4割にあたる29社が、ベンチャーキャピタル(VC)かプライベートエクイティ(PE)から投資を受けている。VC、PCからの調達額は138億ドル(約1兆5,870億円)、上場企業の資金調達総額の63.1%を占める。PEは、未公開企業や不動産に対して投資、収益力を高めた上で上場させるか他の投資家に売却するかする投資家のこと。中国企業の株式上場にあたり、VCとPEがきわめて重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。
VCまたはPEの投資先企業を上場先別にみると、国内上場の16社が120億4,000万ドル(約1兆3,846億円)、海外上場の13社が17億6,000万ドル(約2,024億円)を調達しており、国内市場での資金調達額が海外市場の7倍近くに達している。VCもPEも国内外の市場を問わず積極的な投資を進めているが、いまや国内市場が「主戦場」である実態が見て取れる。投資先企業の株式上場は、VCやPEが"名誉ある撤退"を行う格好の機会であるため、今年の第3四半期は、まさに「豊作」であったといえよう。