また、端末ラインナップを比較しても、iモードは優位性どころか劣勢を感じさせるばかりだ。ヨーロッパやアジアなど海外の多くの市場では、各メーカーから販売されているGSM/W-CDMA端末のほぼすべてが各国のWAPサービスに対応している。そのためコンテンツサービスを利用するのに通信キャリアが販売する専用端末を購入する必要はない。もちろん市場に流通する端末の中にはスペックの低いものもあるため、たとえば"Vodafonelive!対応機種はNokiaのこの端末、Motorolaのこの端末"のように、通信キャリアが利用できる端末を指定する場合もある。
しかしその場合であっても、WAPという共通仕様をベースとしたサービスのため、専用端末は基本的に必要ないのだ。一部の通信キャリアが中国や台湾などのOEMメーカー品を自社キャリアブランド品として販売し"Vodafonelive!専用端末"のようなモデルを用意することもあるが、それらは少数派に過ぎない。
一方、iモード向け端末はiモードに特化した専用品であるため、各メーカーから特定のモデルが数機種リリースされるだけ、と圧倒的に製品数が少ない。しかも製品の投入サイクルも非常に遅い。大手メーカーが毎週のように新機種を投入し、それらがWAPサービスを利用できるのに対し、iモード端末は年に数機種がリリースされるだけなのが現状だ。しかも最新の端末はほとんど用意されない。今の海外iモード端末ラインナップにはNokiaのNseries、SonyEricssonのWalkman携帯、SamsungのUltra Edition、LGのShineといった世界的なヒットモデルが皆無なのだ。
このようにコンテンツ利用の面でWAPとの差がなくなったことに加え、魅力ある端末がな いことが海外iモード不振の大きな要因と言えるだろう。今後、対応端末を増やすにもこれまでのような"専用ハードウェアの開発"を続ける限り、端末の市場投入サイクルの長期化や魅力ある端末の欠如といった弱点の克服は困難であろう。そこでNTTドコモはNokiaのスマートフォン、S60プラットフォーム上で動作するiモード化ソフトウェアを開発、投入することで最新の市販端末でもiモードを利用可能にし、iモード利用者数を増やそうと目論んでいる。