欧州の技術とビジネスの年次イベント「ETRE 2007」(主催: 米Red Herring)が7日開幕した。18年目となる今年は、経済発展が注目されている東欧の中心、ハンガリー・ブダペストを開催都市に選び、10日まで4日間開催された。初日のオープニングキーノートは、イー・モバイル代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏が登壇し、今年6月に正式にサービス開始したイー・モバイルのビジネスについて語った。
千本氏にとって、イー・モバイルは5番目に立ち上げた会社となる。立ち上げのきっかけについて千本氏は、日本におけるARPU(Average Revenue Per User: 加入者1人あたりの月間売上高)がこの7年大きく下がっていないことを指摘し、「変える必要を感じた」と述べる。日本の携帯電話通話料金は世界最高レベル。毎分の通話価格を見ると、日本では0.36ドルであるのに対し、韓国は0.14ドル、米国は0.06ドルと低い。
固定ブロードバンド市場では、イー・アクセスなど新規参入ISPが中心となって起こした価格とサービス競争の結果、スピードは上がり、価格は下がった。現在、固定ブロードバンド市場は、ADSL、FTTH、ケーブルから約200社がサービスを提供している。一方のモバイルの市場規模は、固定ブロードバンド市場の10倍の730億ドル、加入者も4倍以上の1億260万人いるのに、プレイヤーはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社。13年ぶりの新規参入を果たした同社には、大きなチャレンジとチャンスがある。
現在、イー・モバイルが提供するサービスはデータのみ。ネットワーク技術は"3.5G"ことHSDPAを採用し、伝送速度は下り最大3.6Mbps。どれだけデータ通信を利用しても月額5980円と、「真のデータ定額制を実現した」(千本氏)。端末はシャープ製「EM・ONEα」、それにデータ通信カード4機種がある。千本氏によると、3月のプレローンチに続き、正式スタート後の3カ月で加入者は10万人を超え、現在は12 - 13万人。カバーエリアは、全国で見ると約40%、東京、名古屋、大阪などの主要都市では80%を実現しているという。
新規参入となるイー・モバイル、自社の差別化について千本氏は、データ定額制に代表されるデータへのフォーカスをあげる。既存オペレータは、これまでのドル箱である音声の売上げを守るために、データ中心の時代に向けた新しい動きがなかなかとれない。データからスタートしたイー・モバイルの場合、守るべき事業がなく、データ通信を前提としたサービスを提供できる。