――この作品の後も、森さんは多くのアニメ作品にご出演なさってますが、そういう作品への思いをうかがえますか。
「残念ながら、今、アニメーションの放送っていうのは、ほとんど夜中に回っちゃったでしょ。土曜とか日曜の朝とかっていうのは、子ども向けのアニメもやってるようですけれども。なぜもっと17時台、18時台っていう時間帯に放送してくれないのか。『もっと、みんな初心に帰ろうよ』って思うんですよ。塾が終わったらまっすぐ家に帰ってきて、テレビを観て、娯楽というものがどういうものなのかを楽しんで、テレビゲームとかそういうのばっかりじゃなくて、作品を観て、おもしろかったなあ、楽しかったなあ、勉強になったなあ、悲しかったなあっていう、そういう感情を育ててあげる。大げさな言い方をすれば、子どもたちの世界をもっと素晴らしいものにしてあげられると思うんですよ」
――確かに昔は、17時、18時台は子供番組やアニメーションの時間帯でしたよね。
「ところが今は、夜中の1時、2時にアニメーションが飛んでいっちゃって。しかも夕方の時間帯は、ほとんどアニメをやってない。これじゃあ、子どもたちは、楽しんだり、感動したりということを知らないまま、大人になってしまうんじゃないかなあって。所詮、第1期アニメ時代っていわれていた頃の人たちがアニメの影響を受けて、例えば『エースをねらえ!』なら『あ、テニス部に入りたい』とか、『アタックNo.1』なら『ああ、バレーボール部に入りたい』と、クラブ活動をやった人たちが多かったわけじゃないですか。それはある意味、青春の多感な時代の、純粋な少年少女たちの夢をテレビアニメーションを通じて享受してきたわけですよ。それが今、あまりない。さびしい世の中になったなあ、って思いますよね。日本のアニメってすごく素晴らしいし、その技術もすごく高いものをもっている。なんでみんな『子どもたちが起きてる時間帯に、いいもの作ろうよ』って思ってくれないのかなって」
――中でも、とりわけタツノコ作品……主演なさった『マッハGoGoGo』『科学忍者隊ガッチャマン』、そして『宇宙の騎士テッカマン』について、タツノコ作品ならではの世界観というのは、ご自身ではどのように受け止めていらっしゃいますか?
「やっぱりねえ、吉田竜夫さんの生き様がそれぞれの作品にあるような気がするんですよね。例えば『マッハ』にしてもそうだし、『ガッチャマン』にしてもそうだし、『テッカマン』にしてもそうだし、あの人が頭の中に描いてるのは小さなことじゃなくて、宇宙なんじゃないかと思うんですよ。あの人のもっている宇宙観、それが『マッハ』では世界を股にかけてがんばる少年レーサーであり、『ガッチャマン』は人類の平和ために寄与するグループであるし、『テッカマン』はそこからさらに宇宙まで飛び出して平和を守る。多分、彼のもっている宇宙っていう、うん。それぞれの作品にメッセージが込められてるっていう、そんな気がしますね」
――その吉田竜夫さんが創り出した世界の役を演じることによって、森さんご自身が得たものは、おありでしょうか?
「それは、言葉だけじゃなくて、今の自分を形成してくれた部分もあるし、たくさんありますよ。ホントにいろんな財産をもらいましたね。『ガッチャマン』の時代は、もうとにかく大鷲の健という、画面で動いているキャラクターが僕に話しかけてくれたり。まさにそこには、吉田竜夫が画面を通して僕に話しかけてくれてるようなね。そこまでのめり込んで番組をやったっていうのはそれ以後、まだ僕の中にはないし。多分、これからもないだろうと思うんですよね。だから、僕にとって吉田竜夫って、やっぱりすべてなんですよ。早く向こうの世界に逝ってしまったのが、ただただもう悔やまれるっていう。今も頑張ってやってくれていたら、もっと素晴らしいアニメーションの世界を築き上げてくれたんじゃないかなあ。宇宙の次は、竜夫さんの世界はどこにあるんだろうってね。もっとなにか描いてくれるんじゃないかなあ(しばし沈黙)……まあ、やっぱり素晴らしい人ですよ。僕にとっては刷り込みじゃないけれども、初めてレギュラーでやった番組、その作者でもある吉田竜夫さん。そして実際にお会いして、実際にお話して、僕にとってすべては吉田竜夫みたいなね」