そして、第3部ではりそな銀行プライベートバンキング室ファイナンシャルプランナーの川辺靖修氏が、相続対策のポイントを解説した。

遺言をしないと親族間でトラブルが起こる可能性がある

相続や遺言などという言葉を聞くと、筆者は2時間ドラマのサスペンスにありがちな、事件やダーティなものをイメージしたり、あまり触れたくないというイメージがある。しかし、相続や遺言ときちんと向き合わないと自分の死後にトラブルが発生し、遺された家族が困ってしまうことが多々あるという。川辺氏は「例えば、遺言がないと、本来は配偶者がもらえる相続分が減ってしまう可能性もあるんです」と語る。遺言が無い場合は、法定相続人(相続する権利のある人間)が遺産分割協議をして、相続分の割合を決めなくてはいけないという。法定相続人は、配偶者と子、そして、自分の兄弟や、兄弟が亡くなっている場合はその子供(つまり甥・姪)が法定相続人となる。法定相続人が増えると、必然的に自分が財産を遺したい人への相続分が減る場合があるというわけだ。遺された親族が多いとトラブルも増えるという。

りそな銀行プライベートバンキング室ファイナンシャルプランナーの川辺靖修氏

そんなトラブルを回避するためにも、大事なのが遺言をすることだが、遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がある。「自筆証書遺言」は、自分が作成するもので、費用は一切かからないが、形式の不備や表現の不適格により無効になることがある。「公正証書遺言」は、公証人が作成し、証人2人以上の立会いが必要な遺言で、費用はかかるが、形式に不備がなく、偽造・変造・紛失・隠匿の危険性がない。川辺氏によれば「ここ最近は公正証書遺言が増えています」との事で、相続人間の争い防止や配偶者への配慮、安全で確実な相続ができる、という観点から公正証書遺言を活用する人が増えているという。りそな銀行では、事前の相談から、遺言作成の手伝い、遺言書の保管、異動・変更の定期的な照会、遺言の執行を行っているので、一度相談そしてみるといいかもしれない。川辺氏は「遺言は、財産を相続させるためだけにあるのではなく、遺された人々へメッセージを残したり、感謝の気持ちを伝えられる手段です」と語る。確かに、遺された人へのメッセージを送れると捉えれば、先入観を持っていた筆者でも前向きに考えられる。

投資信託、リスク、遺言などは、筆者の日常生活にはあまり縁の無い世界で、当初は、あくまでも仕事として割り切ってセミナーに臨んでしまったのだが、取材してみると投資とは「お金儲け」をするためではなく、「生活を豊かにする」ための手段という印象を受けた。また、遺言についても、人生において避けて通れない話でもある。昨今の投資ファンドの騒動や、"ハゲタカファンド"による買収などの報道によって、投資について良いイメージが無かった筆者だが、今回のセミナーで講演した3人のプロのように、我々一般人に目を向けている人たちもいる。生活を豊かにするための手段だったら、一度投資と向き合ってみて、検討してみる価値はあるかもしれない。そんなことを思ったセミナーだった。

セミナー終了後には、資産運用や相続対策などの質問コーナーが設けられ、専門家がセミナー参加者らの相談を受け付けていた