端末には割賦販売を適用するとともに、基本料金を月額980円に設定し、同社ユーザー同士であれば午前1時から午後9時までは通話し放題という「ホワイトプラン」を、いわば切り札のように投入した。割賦販売の「新スーパーボーナス」の契約数は現在630万件、ホワイトプランは690万件、ホワイトプランより基本料金は高いが他社への通話が割引きになる「Wホワイト」も170万件に上っている。

孫社長は、ホワイトプラン効果を次のように評した。「(IP電話の)Skypeは、ユーザー同士が無料で通話できるため世界中に広がった。では、Skypeが携帯電話の領域にも浸透してきたらどうなるのか。そうなれば、ソフトバンクにとって脅威になるだろうといわれた。Skypeはユーザー同士の通話が無料で、他の方式の電話につなげば有料になるわけだが、これは実質的にホワイトプランと同じことだ。ホワイトプランはまさにSkype状態だ」

また、孫社長はブランド総合研究所の調査結果(2007年6月)を紹介。ナンバーポータビリティ制度を利用して他の事業者に乗り換えた層に対して、乗り換え後の料金をどのように実感しているかとの問いに、ソフトバンクへの移行者は74.6%が「安くなった」と回答しているという。KDDIへの移行者は40.6%が、NTTドコモへの移行者は34.9%が「安くなった」と解答しているのに比べ、大きな差が出ている。

乗り換え後、安さを実感する利用者が他社に比べ多いとの調査結果

法人用途での浸透が底支えする

純増数を拡大することができた要因としては、法人向け需要の面も見逃せない。同社の固定通信部門であるソフトバンクテレコムは、旧日本テレコムを同社が買収し、営業権を継承したものだが、法人向け営業には一定の強みをもっていた。孫社長は「ソフトバンクテレコムは法人向けに携帯電話を売っているが、思いのほか伸びている。法人営業部隊は携帯電話ユーザー獲得に貢献している」と話す。

同社の携帯電話ユーザーは「個人名で加入しても仕事で使う人が結構多く、中小企業の場合、仕事用ではあるが個人名義という例が多い」(孫社長)ため「厳密にいえば何%が法人向けかはよくわからない」としながらも、「"法人名義"の契約はこの3カ月で22万増えた。2006年度の同時期の3カ月では7万だった」という。今年度の伸びは大きくなっており、純増数首位獲得の裏側では、法人向け需要獲得の積極策がかなり奏功していることがうかがえる。

一方、総務省のモバイルビジネス研究会は、いわゆる「販売コミッション」方式のビジネスモデル是正や、SIMロック解除など、国内の携帯電話事業者に対し、事業の根幹にかかわる基本方針の改変を提言しているが、これについて孫社長は「ある特定のやり方を示して、こうしなさい、というのは窮屈な感じだ。割賦方式や、販売奨励金というのも事業のやり方のひとつであり、自由主義経済の下では、さまざまなやり方があるのがあるべき姿ではないか。競争があって、それらのなかから最良なものを消費者が選ぶ方が良いのでは。特定のやり方に閉じ込めるのは、時代に逆行しているのではないか」と述べている。