ドコモは当初、「2in1」は契約数としては「1」ではなく「2」と数え、5月の契約者数はこのやり方で発表した。だが、これにはソフトバンクなどが猛抗議、総務省も「2in1」は1契約と判断、6月からは同社もこれに従い、「2in1」だけは別途数値を公表する形にしている。これについて中村社長は「心外だ。何をもって電話の数とするのか。やはり電話番号ではないか。ユニバーサルサービス基金の負担金も2番号分出している。2in1はいずれ異名義でも利用できるようにするが、それでも1契約とするとしたら、ちょっとひどいということになるのでは」と反発している。
同社のいまの状況は株価にも影を落としている。今年度の初日である4月2日の同社株は21万7,000円(終値)だったが、この決算の発表日、7月27日のそれは17万円だ。この日は米国の株安を受けてのものだが、それを差し引いてもここ3カ月は下落傾向を示している。中村社長は株価を反転させる策として次のように述べた。「携帯電話の需要は飽和状態だが、そうはいってもデータ通信のほうはまだ伸びる余地があるだろう。法人向け需要は、全体の10%程度(という現在の数字)が最高値だとは考えていない」「コア以外の分野、新規事業にどう出て行くか。とりあえず(クレジット)カードを始めたが、未だ初期投資が嵩んでおり、新しい市場に入っていく形が少し見えてくると成長戦略を説明できる」
携帯電話の普及率は75%を超え(2005年度)、個人向けはもはやそれほど大きな伸長が期待できないいま、事業者は法人向けのさまざまな施策に収益源を求めるのは必然だろう。だが、ここでも当然、競合との"衝突"は避けられそうもない。KDDIはマイクロソフトと提携するなど、SaaS事業を強化する方針を明らかにしている。ソフトバンクも拱手傍観しているはずはない。また、「コア以外」の分野でも、KDDIは「MediaFLO」など携帯向け放送技術を利用した事業を視野に入れている。
これらのような領域での激戦はまだもう少し先になるが、ソフトバンクが仕掛けた価格戦略はついに、シェアで先行するNTTドコモ、KDDIを巻き込んできた。両社とも当初は「価格合戦には追随しない」との姿勢だったが、ソフトバンクの攻勢に対し、もはや動かずにはいられなくなった。中村社長は「(値下げ競争が)すさまじい時代になるかはわからない。ある程度の値下げはあるが、それほど激しくはならない」と楽観的だが、今回の割引き策で、割引率をKDDIと同様の50%としたことについては「51%にしていたら、KDDIは52%にしたかもしれない」とも語る。この先々何が起こるか、やはり予想は難しい。