経済産業省は11日、同省に設置されている「コンテンツグローバル戦略研究会」が検討、審議してきた同戦略の中間取りまとめを発表した。コンテンツ産業のグローバル化による海外市場開拓や海外の人材・資金・技術の活用のほか、国内でのコンテンツ流通を促すためのさまざまな提言をしている。また、9月から10月にかけて開催される「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」では、この提言に沿った具体的施策を展開するとしている。

「市場伸び悩み」と「技術革新」に危機感

同研究会は2006年12月に発足。本委員に、週刊少年ジャンプ編集長の荒木政彦氏、ポニーキャニオン会長の佐藤修氏、ホリプロ社長の堀義貴氏、ギャガコミュニケーションズ会長の依田巽氏ら17人(オブザーバー1人含む)、ワーキング・グループ(WG)委員にコナミデジタルエンタテインメント執行役員の石塚通弘氏、ソニー執行役EVP技術戦略・知的財産・エレクトロニクス事業戦略担当の木村敬治氏ら22人(同)が参加。これら日本を代表するコンテンツ産業の代表者らが、本委員会で2回、ワーキング・グループで5回の議論を経て、今回のグローバルコンテンツ戦略案がとりまとめられた。

なぜ今コンテンツのグローバル化が必要なのか? 経済産業省で同研究会を担当する商務情報政策局文化情報関連産業課(メディア・コンテンツ課)課長補佐の井上悟志氏は「市場の伸び悩み」と「技術革新」をあげる。デジタルコンテンツ協会が発行した「デジタルコンテンツ白書2006」によると、日本のコンテンツの市場規模は2001年に約13兆3,000億円だったのが2005年は約13兆7000億円と、4年間で3%しか伸びていない。また、日本のコンテンツ産業の海外依存度(輸出など)は、2004年に米国が17.8%だったのに対し、日本は1.9%とほとんどのコンテンツが国内市場向けとなっている。井上氏によると、海外で人気が高いとされるアニメも国際収支という観点では赤字で、唯一"貿易黒字"なのはゲームという状況だ。

世界では、ハリウッドをはじめとして、欧州、アジアなどでもコンテンツグローバル化の流れが急速に強まっている

また、技術革新により、「映画は映画館で」「小説は本で」「アニメはテレビで」といった従来のプラットフォームごとの区分けが今や通用しないのも、グローバル化を促す要因となっている。デジタル化やネットワーク化の進展により、あらゆるコンテンツが大容量の高速通信網を通してユーザーに提供される時代となっており、こうしたネットワークには、国境を簡単に飛び越える働きがある。

海外市場を意識した作品づくりも必要

こうした要因を考慮し、今日本のコンテンツ産業にとって何が必要かを打ち出したのが、今回のグローバル戦略ということになる。戦略案として研究会があげたのは、以下のようなものになる。

  1. コンテンツ産業自体のグローバル化
  2. 人材、技術、資金などビジネス資源の集積
  3. マーケットプレイスとしての日本市場の構築
  4. 多様なプレーヤーの参入と連携による「バリューチェーン」の再構築

ハリウッドの映画産業が、海外でのロケを増やしたりアジア映画のリメイクをしたりと、海外市場開拓を加速させる一方、ヨーロッパでは国際共同制作、アジアでは香港がコンテンツセンターの役割を果たしつつあるなど、グローバル化の動きは急だ。コンテンツ産業のグローバル化においては、これらの国や地域と同様、ロケを海外で行うなど、海外市場を意識した作品づくりが必要となる。

映画『ブレイブ・ストーリー』を制作したゴンゾなどを傘下に置くGDHグループが『アフロサムライ』という米国向けアニメを制作したのは、そのいい例だ。『アフロサムライ』は、GDHがはじめから米国市場向けに制作した作品だが、井上氏は「市場ごとに異なる作品を作るのは、自動車などの製造業では当たり前となっていることではないか」と指摘。まず海外市場の動向を把握することが大切だと述べている。

ビジネス資源の集積では、国内の人材育成はもちろん、海外人材の幅広いネットワークを日本の人的資源として集積するとともに、資金についても内外の多様な資金ソースを日本に呼び込んで活用。国内的にも、潤沢な投資資金がコンテンツに向かうような環境を整備する。