近年、外食業界は多業態・多店舗化の流れが主流になり、本部と店舗をつなぐ業務が煩雑化している。もはや、属人的な理では限界が生じるのはやむを得ないのだろう。そこで、外食産業に詳しいITベンダである日本システムウエア(以下、NSW)によるセミナーをレポート。IT投資による効率的なチェーンオペレーションの実現にむけ、具体的な施策とは何か、探ってみた。

チェーンオペレーションの現状と課題

チェーンオペレーションとは、多店舗展開のための手法で本部を軸に店を出店、運営する方式。本部が統括管理(仕入、メニュー開発、事務計算、人員配置など)し、各店舗はセントラルキッチンで材料の調達、調理、供給を行っている。

しかし、店舗が増えるにつれ、地域や顧客から求められるものに差が出て業務が煩雑化する。かといって、標準化すれば没個性になり店ごとの差別化ができなくなる。このような課題に対し、NSWソリューション事業本部ビジネスソリューション事業部 滝口奉広氏は本部の徹底した市場分析による多店舗運営を提案する。

チェーンオペレーションの現状課題は山積み

NSW ソリューション事業本部ビジネスソリューション事業部 滝口奉広氏

「今は多種多様な時代。それぞれ異なる各個人の興味を生かすのが課題。データベースを利用した先読みができるかどうか。これが成功に繋がる秘訣です。」(滝口氏)

そこで、まず導入すべきは、今後の基盤となるデータベースの徹底した一元管理だ。このデータはいずれ顧客動向の分析として活用され、やがては嗜好トレンドといった経営指標をオペレーションするための分析に繋がる。

しかし、いきなり全部取り入れるのはリスクが大きい。「逆に業務が煩雑化してしまう。あくまでもステップを踏んだIT化計画が重要です」(溝口氏)、 そこで次のようにステップを踏むとリスクも少なく円滑にシフトできる。

  1. 本部と店舗間のインフラ及びフローの自動化
  2. インフラを活用した教育、研修の実施
  3. データの蓄積
  4. 各種分析(顧客、店舗、メニュー、地域など)
  5. マーケティング分析

チェーンオペレーションの今後

1の具体策として、ソリューション事業本部営業統括部 露木雄一郎氏は、まずは本部と店舗の二重作業をやめるためのIT化を薦める。「月報や伝票など、本部と店舗間では案外、同じ内容を二重入力しているケースが多い。そこで使い慣れた伝票をIT化し、書類を回覧させるようにデータをやりとりする。これにより、使い慣れた紙と同じ感覚で業務効率をよくすることができます」(露木氏)

2の具体策として、ソリューション事業本部営業統括部 関正孝氏は、動画マニュアルを利用した従業員教育のIT化を提案する。 「従業員に味・接客サービスなどの基本業務を理解させる仕組みをIT化するのに、動画マニュアルはひじょうに有効だ。動画なら活字では伝わりにくいニュアンスも汲み取れ、より従業員の理解を高めやすい。外国人従業員に対しては母国語で教育することで細かいニュアンスを把握させることができ、接客サービス向上に直結するだろう。さらに店舗間の味や教育レベルの平準化、教育のための人件費や出張費も削減できます。」(関氏)

NSWソリューション事業本部営業統括部 関正孝氏

NSWソリューション事業本部営業統括部 露木雄一郎氏