次に環境省廃棄物・リサイクル対策部の関谷毅史氏から、地球温暖化対策としてのエコ燃料拡大について、地球温暖化のメカニズムから改めて解説された。大気中のCO2等の温室効果ガスが、地表から宇宙空間へ逃げていく熱の一部を吸収、地上に再放射して、再び地表を暖めるのが「温室効果」だ。CO2量は、18~19世紀の産業革命以降から急速に増加、特にここ20年程度で伸び率は急速に上昇し、2002年には1750年当時の3割増となる374ppmとなり、有史以来最高の値となっている。これにより、生物環境へは「影響の恐れがある」という段階を通り過ぎ、「すでに影響を受けている」状況にある。
過去100年間で世界平均気温は0.74度、海面水位は約1.8mm上昇し、21世紀中に平均気温は1.1~6.4度、海面は18~59cmもの大幅な上昇が予測されている。また、温暖化は世界中のCO2排出量を今すぐ半分に削減したとしても止まらず、100年単位でやっと変化するという。さらに生態系への影響は1000年単位という長期スパンで変化する。こうした状況の中で、バイオ燃料など低CO2燃料など技術の果たす役割は非常に大きい。コストを懸念する声もあるが、コストは制度で変えられるという。
環境省では、エコ燃料への取り組みについて、沖縄県宮古島や、大阪府堺市、京都市でのバイオディーゼル燃料の製造・実証を援助している。またエタノール混合ガソリンE3の本格展開や、自動車メーカーによるE10対応の促進なども実施し、2010年にはすべての新車でE10対応を完了することを目標としている。
京都議定書では先進国だけがCO2削減を義務づけられているが、これは途上国が参加しないということではなく、先進国が率先して行うということ。まもなく、中国を含む途上国のCO2排出量が先進国を上回ることが予想されているという。こうした取り組みは日本だけでは不可能であり、先進国や途上国も含めた削減が急務である。2050年には少なくとも世界全体でCO2を半減させ、日本は環境立国として世界をけん引していきたいと締めくくった。
バイオ燃料製造工程サンプルやバイオ燃料プラントなど
会場の展示ブースには、糖質だけでなくセルロースからエタノールを抽出する上で生成される各中間物質や、抽出用の小型プラントなども展示された。
独立法人森林総合研究所では、木材チップから水酸化ナトリウムを使って前処理後、糖化酵素と酵母でバイオエタノールを抽出。不要物として除去されたリグニンからバイオプラスチックを作る技術の展示を行っていた。一般的には水酸化ナトリウムのかわりに硫酸を使うが、水酸化ナトリウムを使うことでリグニンは別に再利用できるというもの。また、水酸化ナトリウムは硫酸よりも危険度が低いというメリットがあるという。
ヤンマーでは、木質バイオマスを燃料として蒸し焼きにすることで燃焼ガスを生成、そのガスを動力としたコジェネレーションシステムを開発中という。同システムは2009年を目処に製品化の予定。
またヤンマーでは農場向けのコジェネレーションシステムも製造している。これは牧場牛などの糞尿を発酵槽に溜め、生成したメタンガスにより発電を行うというもの。およそ牛200頭で25kWの発電機2台を稼働できるという。
セベックは、食用廃油をバイオディーゼル燃料(BDF)に変換する装置の展示なども行っている。装置の価格は350万円で別途薬剤などが必要とのこと。授産施設などに導入されており、そうした施設で利用されるマイクロバスなどの燃料として利用できるという。なお、現在BDF100%の燃料は課税対象になっていないため、自家生成したものを燃料として使用しても問題ないという。
また、ビール会社としても有名なサッポロのグループ会社であるサッポロエンジニアリングは、ビール製造で培った大規模発酵設備や酵母菌などのノウハウを活かしてバイオマスエネルギーの製造ソリューションを提供しているという。すでに丸紅、月島機械とタイでのバイオエタノール生産プロジェクトに参加、現在プラントを製造中という。
バイオエタノールは、ガソリンエンジンに比べて透過性が高く、ガソリンエンジンなどに使用される通常のゴム素材配管ではガソリンに比べて1000倍もの量が染み出してしまうという。そこで、エタノール高配合率燃料や、100%エタノール燃料を使用するには、浸透率の低い素材を使用した配管が必須となる。
エアコンで知られるダイキンでは、浸透率の低いフッ素ゴムも製造している。これまでガソリンエンジンで使われてきたゴム素材は、浸透率は高いものの柔軟性があり、フッ素樹脂は浸透率は低いが折り曲げにくいという特徴があった。そこでダイキンではゴム素材の中に薄いフッ素樹脂膜を挟んだ配管を開発している。これにより、エタノール耐性が高く、折り曲げやすい配管が可能になる。2007年中には商品化されるという。