パシフィコ横浜で、バイオ燃料産業を模索する「バイオ燃料製造装置&材料展 Bio Fuels World 2007 Conference & Expo」が開幕した。バイオ燃料に特化したイベント開催は初めて。会期は11日~13日で、入場料は5,000円(ホームページで事前申請すると無料)。初日となる11日は農林水産省や環境省のスタッフによる基調講演が行われた。
基調講演では、まずBio Fuels World協議会委員長である京都大学大学院エネルギー化学研究科の坂志朗教授が挨拶を行い、「4月に都内でもバイオ燃料を混合したガソリンの販売が開始され、2010年にはバイオエタノールとガソリンを混合した「ETBE(Ethyl Tertiary-Butyl Ether)」は21万リットルの利用が見込まれているがまだ十分ではない。本イベントは未来のバイオ燃料を模索する交流の場。今後のバイオ燃料の安定供給の可能性を模索していきたい」と語った。
国策としてバイオ燃料の生産拡大を目指す
続いて農林水産省の大臣官房環境政策課の末松広行環境政策課長が登壇し、国産バイオ燃料の生産拡大政策について解説した。農林水産省ではこれまで食料を中心に扱ってきたが、これからはバイオマス燃料を取り扱っていきたいという。
バイオ燃料はバイオマスによって生成される。バイオマス(BIOMASS)とは、BIO(生物資源)とMASS(量)を足した造語で、再生可能な生物由来の有機性資源を指し、石油などの化石資源を除いた、太陽のエネルギーを使って生物が合成したもの、生命と太陽があるかぎり枯渇しない資源として定義されている。また、人間のライフサイクルから考えても大気中のCO2を植物が取り込んだものを再放出するだけなので、実質的な大気中のCO2が増加しない「カーボンニュートラル」な資源である。バイオマス燃料には、ガソリン代替が見込まれる「バイオエタノール」と、軽油代替が見込まれる「バイオディーゼル燃料(BDF)」の2種類に分けられる。
政府ではバイオマス・ニッポン総合戦略として2002年12月に閣議で決定。地球温暖化防止を筆頭に、廃棄物の発生を抑えてエネルギーを循環利用する循環型社会の形成、またバイオマス資源からエネルギーや新素材が生まれることで新しい産業の創出と雇用機会が創出でき、さらにバイオマスとして植物を育成することで農山漁村の活性化にもつながるとしている。2006年3月の閣議では、さらにバイオマス輸送燃料の利用を促進し、未利用バイオマスなどを活用したバイオマスタウン構築を狙うことが決定されている。
なお、バイオ燃料の製造コストについては、食用作物をそのまま使うと逆にコストは高くなってしまう。諸外国ではその国の主要生産物を使っており、ブラジルではさとうきび、アメリカではとうもろこしを原料にバイオ燃料を製造している。日本では、米作が盛んであるが、食用米を燃料用に転用するとコストが高くなってしまう。そこで、食用米の2倍の収穫量をもつ多収穫米を利用することでコストを抑える。また、食用としてではなく、燃料用として製造することでコストはさらに削減でき、米を原料として使うことで、食用に比べて味は悪いがいざというときの食用にもなるという。
日本人の米食離れで、現在耕作放棄地は増え2006年には埼玉県の広さとほぼ同じ386ヘクタールが耕作放棄地となってしまっている。こうした土地を最大限に活用することでバイオマスの安定供給と、いざというときの食料を確保できるというメリットがあるという。現在バイオエタノールの原料は糖質やでんぷん質が主だが、稲わらや建築廃材などのセルロースからエタノールを抽出する研究も進んでいる。
バイオエタノールを利用できるように自動車側の対応も進んでおり、現在市販されている自動車でもガソリンにエタノールを3%混合する「E3」では、そのまま利用できるという。エタノールの混合率を10%に上げた「E10」では、燃料ポンプや燃料ホース、金属の腐食対策が必要とされる。トヨタでは、平成18年6月には「全てのガソリンエンジンでバイオエタノール10%混合にタイする技術的対応を完了」と発表しているなど、メーカーでの対応も進んでいる。また、最近では100%エタノールでも走行可能なFFV(Flex Fuel Vehicle)が開発され、トヨタやホンダ、三菱が発表を行っており、今後の増加が見込まれる。
今後バイオ燃料の世界はめまぐるしく変わる。末松 環境政策課長は、日本国内の農業を活かして、バイオ燃料技術を開発し、国内へのエネルギー供給と同時に、世界に技術を広げて貢献したいと締めくくった。