デザイナーの育成にも力を注ぐ
さて、Flex 3やAIRといったRIA(Rich Internet Application)のポテンシャルを十分に引き出すためには、UIのデザインにも気を配る必要があるだろう。エンタープライズの世界では業務の効率化ばかりに目がいきがちだが、ユーザーの満足度を高めるためには、UIを美しく使いやすいものにすることも重要なポイントだ。こうした問題を解決ができる優秀なデザイナーをいかにして増やせるか、この点に上記の新テクノロジーが普及するか否かがかかっていると言えるだろう。
アドビでは、こうした状況を鑑みて、デザイナーの育成にも力を入れているという。ワトコット氏によると、米国では技術面だけでなく、デザイン面のコンサルティングサービスも提供している。また、デザインのベストプラクティスをまとめたドキュメントを公開しているほか、出版社と協力して書籍も発行している。加えて、デザインの教育コースも提供しており、「将来的にはFlex開発者の認定テストのように、デザイナーの認定テストも用意することも検討している」(ワトコット氏)という。
DTPデザイナーの取り込みも
さらに、アドビではPhotoshopやIllustrator、InDesignといったDTP向けアプリケーションも提供しており、そのユーザーを多数抱えている。そうしたユーザーをWebの世界に引き込むことも考えているようだ。
「FlexやAIRといった技術を使うと、ロジックとデザインを完全に分離できる。実装部分についてはほとんど意識する必要がないため、既存のDTPデザイナーがWebデザイナーへ転身することも比較的容易なはずだ」(ワトコット氏)
DTPデザイナーには、全体のバランスを考えながら、色合いや各種コンポーネントの形状などを調整する能力に長ける者が多い。彼らを取り込むことができれば、業務アプリケーションの使いやすさは大きく向上するだろう。
ワトコット氏が考える次世代機能
アドビでは同社製品の今後の方向性についてどのように考えているのか。ワトコット氏は、あくまで個人的な希望と断ったうえで、次のように続けた。
「Adobe Reader/Acrobatに関しては、コラボレーション機能を強化できればと考えている。例えば、Adobe Readerに通信機能を設け、ドキュメント閲覧者が作成者と直接議論できるようになれば作業効率が向上するのではないかと思う。こうしたかたちで発展が進めば、10年後には電話やFAXなどが必要なくなり、PC1台ですべての業務がこなせるようになるのではないだろうか。」
ご覧のとおり、PDF、Flex、AIRといった技術でWebクライアントの分野をリードするアドビでは、業務アプリケーションの分野でも積極的に活動を続けており、さまざまなソリューションを提供している。他社とは異なるアプローチで展開される同社のソリューションは、開発者に新たな選択肢を与えることになるだろう。