The Net Effect - ネットワーク分野での展開
最後はやはりネットワークである。FTTHやWiMAXなどのトレンドが登場しつつあるものの、アメリカはまだネットワークで必ずしも先進国とは言えない。ちょうど6月26日の「USA Today」に関連した記事があったのだが、アメリカの平均的な通信速度は1.973Mbps(最高速はRhode Islandの5.011Mbps、最低速はAlaskaの0.545Mbps)程度。世界全体では、日本が61Mbps、韓国が45Mbps、フランスが17Mbps、カナダが7Mbpsといった数字になっており(いずれもCWAの提供する数字)、まだ十分にネットワーク環境が整っているとは言いがたい(写真18)。その一方で、シルバーエイジには広くインターネットが受け入れられている(写真19)。したがって、まだまだネットワーク普及の伸びしろが残されている、というのが主張だ。
写真18 同氏によると、アメリカのティーンエイジャーの90%、2100万人の子供はインターネットと切り離されている。日本と異なり、携帯電話は通話と ショートメッセージサービス(SMS)を利用する程度が普通だから、携帯を持っていてもインターネットにはアクセスできない。 |
このマーケットに向けて、同社ではネットワーク機器向けにはPowerPCを提供しているほか、WiMAX基地局向けのパワーアンプなどで大きなシェアを持っている。そして、今後はさらにこの分野への取り組みを深めていくことを明らかにした。
例えばPowerPCについては、2008年に現在の90nm SOIプロセスから(65nm世代をスキップして)45nm SOIを採用することを明らかにした。また今年秋を目指して、"SYNC"と呼ぶ新しいサービスをFordやMicrosoftと共同で提供する予定であることを示した。これは車載向けの統合コンソールサービスとでも言うべきもので、Bluetooth、Caller ID、Audible text messaging、Navigationなどを統合したものになる。さらに無線通信の分野ではMXCアーキテクチャをすでに発表しており、3Gの携帯電話のみならずHSDPA/HSUPAにも対応し、将来のSuper3Gや4Gにも適用できるとした(写真20)。
写真20 SIPパッケージで提供されるMXCアーキテクチャの製品。これはすでに発表している「MXC300」シリーズのもので、これでそのままSuper3Gや4Gに対応できるわけではないだろうと考えられる |
ここで壇上にはNTTドコモの千葉耕司氏が登場し(写真21)、NTTドコモの将来戦略を語った(写真22)。ここで千葉氏が強調したのはSuper3Gや3.9G、あるいはLTE(Long Time Evolution)という名称で知られる新規格への取り組みである(写真23)。千葉氏は講演の中で、LTEのプラットフォームに期待する要件として、
- 高速かつ低レイテンシの送信を可能にし、将来のマルチメディアリッチなサービスを実現できる、十分強力なデジタル信号処理能力
- 3G世代と同等のスタンバイ/通話時間を実現できる省電力性を確保するための、リーク電流の削減とパワーマネージメント性
- 小型化および薄型化
- さまざまな形態の端末を実現するために、RF/モデム/アプリケーション/外部インタフェースについてオープンでコモンなインタフェースを採用し、かつさまざまなOSをサポートできる、スケーラブルでフレキシブルなプラットフォーム
以上を挙げた。特に小型化および薄型化については、厚さ11mmの現在の携帯電話を示しながら、携帯電話の次世代通信規格であるLTE(Long Term Evolution)ではこれを10mmにするとはっきり明言し、今後も薄型化へ邁進することを示した。