--今回、ニフティと@NetHomeと共同で行動ターゲティング広告をサービス展開するいきさつは?

共同展開のメリットは、もちろんユーザー規模の拡大にあります。今回の2社に関しては、同じプロバイダー同士なので、ユーザーの重なりが少ないという点がもっとも大きいです。実は2003年にもISP5社が共同の広告商品展開を開始しています。これは一度広告を出稿すると、5社のトップページに一斉に広告が掲載される仕組みで、広告主は無駄のない出稿が可能になります。今回に関してもそういった流れがあり、まずはISP2社に声をかけることにしました。

--博報堂とも協業し、4月には「行動ターゲティング広告配信実験」の結果を報告されているが、そこに至る経緯や意義はどんな点にあるのでしょうか?

他の広告手法と同様、広告ターゲティング広告にも広告主にとっては技術だけでなく、有効に広告を出稿したいという考えが当然あります。"有効に"というのは、見込み客に近い人に集中して広告を出すことです。リスティング広告は検索キーワードを入力し、自らが見込み客であることを宣言しているようなもので、とても有効な手法です。そして、その代替的な手法として、行動ターゲティング広告に取り組まなければならないのですが、広告主がどんな方法で、どのくらい前から見込み客をキャッチしているか、あるいは広告主が期待しているものなどをいちばん把握しているのは、やはり広告代理店だと考えたわけです。

一方、我々は利用者と直に接してサービスを提供するプロバイダーで、一般利用者に近い立場で一般ユーザーの行動や技術には精通しています。そんなわけで、ちょうど1年前からの出資パートナーでもある博報堂と共同し、事業を展開することになりました。

--企業としてのNECビッグローブは、今後どのような方向へ向かうのでしょうか?

NECビッグローブの事業は、ISP、ブロードバンドメディア、プラットフォームの三本柱で展開しています。ブロードバンドメディア事業とは、広告、コンテンツ、ECサービスを含むサービスを、BIGLOBEブランドとして個人向けに直接提供しているものです。それに対して、プラットフォームサービス事業は、NECビッグローブがこれまで手がけた事業で培ったノウハウやプラットフォームを、企業向けに提供するものです。

NECビッグローブは、ISPとメディア事業というコンシューマー向け事業を同時に展開しており、例えば、データセンターにつながっているネットワークなどもNECビッグローブ本体で手がけているので、負荷の変動に対しても早急に対処でき、スケールメリットに対する相乗効果を出せるという点が他のSI事業者と異なる強みです。NECビッグローブとしては、もちろん3つの事業の間でシフトの変動があるかもしれませんが、今後も3本柱のそれぞれの事業を、別々に展開するのではなく、全体を底上げしながら相乗効果を追求して展開していくことを目指します。

ネット広告分野に関しては、行動ターゲティングへの比率が今後も増えていくと考えています。今はまだ開始したばかりですが、2~3年後には構成比で全体の2~3割が行動ターゲティング広告で占められていくと予想しています。また、現在、年120%で成長している市場に対して、NECビッグローブではそれを上回る成長率を目標として設定しています。

行動ターゲティング広告は、ターゲティングする"仕掛け"であり、広告の表現とターゲティングの手法を組み合わせることが可能で、行動ターゲティング広告的手法を動画広告に取り入れることを、その次のステップとして準備しています。つまり、我々が展開する行動ターゲティング広告では、表現の適用範囲を広げるという考え方なので、そういう意味でネット広告全体における比率が非常に拡大していくだろうと見込んでいます。